第2話

今日は大雨ですよ?

それと、"ここ"ではお静かにお願いします。


ホワイトゴールドの髪をふわりとなびかせてそう返した司書は、深紫の目でこちらを見据える。


不幸なことに、自分の奇特好奇心は最近彼女に向けられていた。ただの司書、ただのイギリス人だが、自分の感が彼女はただのギャラリーではないと訴えていた。


そもそも本嫌いの自分が大英図書館などに最近足を運んでいる理由は仕事柄少々気になることがあったからだ。

そのために貴重な人生の残り時間を、こうして古びた紙に羅列されたつまらない文字を見ている"ふり"をすることに費やしている。実につまらない。


昨日お読みになっていた本の続きは、14番の棚、上から2番目の列の右から19番目です。


そう言って去って行く彼女の背中を見つめながら頭の中で再生するのは、先週起きた貴族殺人事件の現場だ。




現場は大英図書館

被害者は慈善活動家の___伯爵

頸動脈を横一文字に切りつけられ、出血多量で死亡。

図書館の床には大量の血液が流れ出し、周囲の本棚の本には赤い血潮が飛び散っていた。


そんな事件があったせいか少し人での少なくなったように感じるこの図書館は、観察すればするほど違和感で埋め尽くされていた。もちろんこれも自分の第5感的感だ。


あの司書

彼女を始めとしてこの図書館は、何もかもが作り込まれているようで、完璧すぎた。

あの事件などなかった事のように日々運営しているこの図書館は、自分とは一生運のない場所とばかり思っていたが、人生とはやはり何が起こるか分からないもので、自分はすっかり本好きの若造と周囲に認識されるようになっていた。

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