悪の花3

「予想外、だね」

「ええ、これは、悪意の人格が完全に体を乗っ取ってしまってる。私の、私の妹が・・・」

 愕然とする生田目

 本来ならリディエラが悪意に染まったとしても、すぐ元に戻せる手積もりだった

 しかし予想以上に悪意の感染が強く、リディエラの中で大きく膨らんで、別人格として成り立ってしまった

 こうなれば本来の人格が閉じ込められてしまい、ショックで目覚めさせるか、あるいは・・・

「もしもの時は殺すしかないけど、できるの?」

「私、私が責任をもって」

「無理でしょ? その時は僕がやるよ。君たち二人を一緒に」

「お願いします」

 現在リディエラは悪意の暴走にある

 これがもし元に戻らなければ、肝心な時にアウルの目的は失敗しかねない

 元に戻ればそれでいい

 力が消失すればリディエラも元に戻るだろう

 しかし元に戻らなければ力ごと消滅させなければならないだろう

 そうなれば、魂も消え、輪廻の輪に乗ることもなく完全な消滅

 一人でそうさせないためにも生田目は姉妹仲良く消えてしまおうと思った

 アウルもその意図を汲み、二人を消失させることを約束した

「どうしたの? 早くやりましょう」

 そんなこととはつゆ知らず、悪リディエラはキョトンと首をかしげていた

 彼女はアウルの悪意に反応し、これから悪を振りまけると信じているようだ

 それを利用する


 この子がこうなったのは私のせい

 だから私が責任を取らなくちゃ

 本当なら、二人一緒に力を使い果たして消えるはずだったけど、それを防ぐために私の力を少し植え付けたのが間違いだったのかもしれない

 植え付けた力が悪意に取り込まれて自我を持ってしまった

 私のせいだ

 この子を、救えない

 この子だけでも生き残らせるつもりだったのに

 私は・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る