開花15

 ふわりふわりと浮いて行った男は空中で弾けた

 そしてゆっくりと落ちて来る

 その男はもはや先ほどのような邪悪な顔はしておらず

 ただの普通の男になっていた

「悪心はどこから来るのでしょう? もともと持っていた、あるいは育ってきた環境、突如芽生える?」

 そうこう考えているうちに景色が変わり、塔の内部にいることが分かった

「あれ? 戻ってきた?」

「りえ!」

 レノンナがりえを抱きしめる

 目を覚ましたりえは周りを見る

 すでにレノンナ、アモン、アーキアが目を覚ましている中、エーテのみが未だ目覚めずにいた

 そんなエーテは相当に酷い夢を見ているのか、かなり苦しんでいるようだ

「エーテ・・・」

 皆心配する中、りえは一人の女性がアモンにピタリと引っ付いているのが見えた

 アモンのことが大好きな炎精霊はこの世界に来た際に他の精霊達の元へ話をしに行っている

 ならば今いるこの女性は?

「ああ、こいつはレヴィと言ってね。僕と同じ悪魔さ」

「そしてアモンの恋人よ!」

「あいやそれはこいつがいつも勝手に言ってるだけで」

「なんでよ! 私はあなただけを愛してるの! だから私が恋人でいいじゃない!」

「いやまぁ別にいいんだけど、そうなると、ちょっとややこしいことになりそうで怖い」

「あー・・・」

 アモンの言葉で全員の頭に浮かぶ精霊エンナ

 普段は優しいが、ほれたアモンのこととなると嫉妬と病みで酷い状態になる

 今彼女がレヴィのことを見れば、この場は修羅場となるだろう


 そんな中、エーテは幻の中を彷徨っていた

「エーテリア、エーテリア、こっちだよ、カワイイねぇカワイイねぇ。いい子だよエーテリア、私の、可愛い妹」

 姉の声がしていた

 幼いころ、エーテは姉に可愛がられて育った

 それこそ猫かわいがりで、あれがとてもではないが、嘘であったとは思えない

 エーテの婚約者が殺された日

 変わり果てた姉ヴィータを見た

「あれは、姉さんだったのか?」

 あの時から心の隅にこの疑問はあった

 今幼少期の光景を見ている

 だからこそ、その疑問は段々と強く大きくなった

「今のヴィータは、姉さんは、別人?」

 その答えはまだ出ないが、この映像を見せられている意味は分かる

 これはトラウマを克服するものだ

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