大勇者と悪意9

 ダーカーとの邂逅から少し後のこと

 アイシスはカテン、アンを連れて救世界へと向かっていた

 緊急のSOSが届き、急いで出立したのだが、着いて驚いた

 結界は滅茶苦茶になっているし、不思議な雰囲気の女神はいるし、種を植え付けられた五人と再会するし、とにかく怒涛の展開で少し思考停止した感があった

 だが話を聞いて驚いた

「この子が?」

 話に出たのはこの世界を襲っていたウルの少年

 そしてその生まれ変わった姿の少年だった

 彼は不思議そうにアイシスを見上げている

「か、可愛いな君」

「おっとショタを喰うお姉さんは見逃せないねぇ。駄目だよ大勇者」

「いや喰わねぇよ! 何考えてんだお前!何考えてんだお前!」

 顔を真っ赤にして怒るが、エーテがふざけて言っていることなど分かっている

 少年の名前はリバスと言い、今は女神メシアの養子となっているようだ

「それでこの子がもともと悪意の塊を受けたウルだったと。それで、この、とんでもなく強そうな女神様がねぇ。なるほど、リディエラとどっちが上かな?」

「え、リディエラちゃんを知っているのですか?」

「そりゃぁ、知ってるも何も友達だし」

「なんと! リディエラちゃんは私の妹のようなものなのです! そうですか、あの子のお友達。これからもあの子をよろしくお願いしますね」

「はい、もちろんだ、です」

「フフ、かしこまらなくていいですよ」

 優しい女神だと思った

 包み込むような、メシアと同じくこれぞ女神だと思えるような包容力

 女神プリシラ、アイシスはまた尊敬できる者が増えた

「で、この世界はもう大丈夫なんですか?」

「ええ、ありがとうアイシス」

 メシアも大丈夫だと太鼓判をおした

 この世界の結界はプリシラによってかなり強化されるようで、それなら安心だとアイシスもホッと胸をなでおろした

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