大勇者と悪意7

 バキバキと空間にすら亀裂が入り、世界の崩壊が始まる

「お前なにやつ、悪いやつ!」

 カテンが突然現れ、男に巨大なハンマーを打ち付けた

「よせ、カテン!」

 アイシスが止める間もなくカテンの力がダーカーに炸裂する

「血気盛んだねぇ少女。でもなぁ、今一つ届かない。珍しい力ではあるけど、それはもう何万年も前に一度見たからなぁ」

 カテンの力は星すら砕けるほどのものだった

 新しい家族であるアイシスを守ろうと全力で放った一撃

 さらに言うと彼女はダーカーの気配に覚えがあった

「お前、私の敵、そう、思い出してきた!」

 カテンの記憶が呼び覚まされる

 未来に飛ばされる前にこの気配に遭遇した

 それは父以外の家族を殺し、大切な親友を奪った

「そうだ、思い出したんだ。オレはあの時、何もできなかったんだ」

 ハンマーを引き、さらに力を増す。早さを増す。天を穿ちダーカーの壊した空間を消し飛ばす

「なんだ、この力、これは天人の力じゃないぞ!」

 ダーカーはかつて天人を滅ぼした

 月兎も、その全てを滅ぼしたと思っていた

 月兎だったころのトコが覚醒したため数人は逃してしまったと思っていたが、誰もかれもが重傷で生きてはいられないと思っていた

 それが今目の前に、自らの脅威となって立ちふさがっている

「思いもよらない! これは素晴らしい! アウルに良い土産ができそうだ!」

 ダーカーの力がまたカテンの力を上回り押し始める

 だがカテンも負けていない

 さらに力が増していく

「く、ウオオオオ!」

「お前を許さない。トコも、弟たちも、かか様ととと様も、みんなお前のせいで!」

 アイシスもアンも彼女達の間に割って入れない

 それどころか指一本動かせない

「このぉおおお!!」

 カテンのハンマーは砕けたが、そのハンマーから別の武器が現れる

 天人の秘宝の一つ、暗斬りの大太刀と言われる刀

「なんだ、これ?」

 カテンはハンマーを父親からもらっていた

 カテンの父親は最初に生まれた天人の子孫、そして最も力を色濃く発現できたのがカテンだった

 そのカテンの持つ大太刀は彼女の力をさらに引き出した

「お前を倒すのは俺だ! 天人全ての思いを込めた俺の一撃だ!」

 大太刀の虹色の光がダーカーを照らす

「覇天影刃!」

 真正面からダーカーを捕らえた

 だがあっさりとかわされてしまう

「すごい力だが精度がなってないね」

「精度なんて関係ない!」

 ダーカーの後ろが切り裂かれ血が吹き出る

「な、え?」

「これの使い方、分かったよ。こうすれば斬れる」

 カテンはあらぬ方向を攻撃していたが、なぜかその全てがダーカーの体を切り裂いていく

 どこで斬ろうと見えている標的ならば必ず当たる

 もし手から離れても必ず帰ってくる

 まるでミョルニルのようなその刀はカテンの手によく馴染んだ

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