大勇者と悪意5
遥か昔の地球
ようやく様々な種族が生まれ始めた頃
人間達の祖である五色人から天人や天女が生まれた
黄金人の末裔である彼らは黄金人と同じく圧倒的な力を持って生まれたが、争いを好まず、天神は月へ、天女は天津ヶ原という特殊な世界へと消えた
天人たちは、仲のよかった兎人族を連れて月へと向かう
しかし月はとても兎人が住める環境ではなかったため、天人たちは自分達の力を分け与え、そして月兎という種族が生まれた
それこそがトコたちだ
平和な世界
月は正に楽園のようで、あのかぐや姫もこの世界の住人だった
かぐや姫などがいた時代からさらに時は進み、現代から数千年ほど前のことだ
月に闇に染まった黒族という種族が襲来し、月兎や天人を殺戮
その際トコも当然襲われた
だがトコは月兎特有の力を発揮
狂気の目を使ってこれらを退け、さらにはその力と天人の力が合わさった結果、一緒にいたこの二人を未来へと飛ばしてしまったのだ
トコは彼らは死んでしまったと思っていたが、この世界で生きていたのである
これはトコに嬉しい報告ができるとアイシスは喜んだ
「なんと! トコは生きていたのか・・・。本当に、本当によかった」
「トト様、トコって誰だ?」
「そうか、覚えていないか。そうだな、お前はあの時からの記憶をすべて失ってしまったからな」
テンはかつてはカテンという名前だったそうだ
トコとは幼馴染で、幼いころ共に遊んでいた仲だった
だが襲撃により、頭部に致命的なダメージを負い、瀕死の重傷を負った
そのせいか、回復した今でも記憶は戻らず、父親が一から言葉を教えたためか、拙い
トコに会っても思い出せるかどうかも分からないが、もし思い出せば彼女は完全な天人としての力を開花させるかもしれない
「どうかこの子を連れて行ってやってくれないか? 俺はもうすぐ死ぬ。そうなればこの世界にこの子は一人取り残されてしまう」
父親は襲撃の時の怪我が原因でも長くはない
それはアイシスの目から視ても明らかだった
黄金鎧の力で治そうにも、傷は治るかもしれないが、魂自体がすでに壊れている
ここまで生きているのが不思議なほどだ
恐らく娘を守りたいが一身でここまで生き永らえたのだろう
「・・・。分かった。任せてくれ」
「すまない恩に着る」
「? トト様、どうしたの? 俺トコにもいかないよ? トト様とずっと一緒にいるんだ!」
テンは父親にギュッと抱き着く
「だめなんだテン、もうすぐ俺はいなくなる。そうなればお前は一人だ。頼むから、最後に父の言うことを聞いてくれ」
「やだ! 絶対ヤダよ!」
わんわんと大泣きするテン
アイシスはしばらく二人にしようと洞窟を出た
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます