大勇者と悪意4

 テンが先に洞窟に入る

 洞窟はヒトが有に五人は並んでは入れそうなほど広いのに、なんと彼女が手作業で掘ったという

 しかも道具を一切使わずにだ

「三日でできたぞ! とと様にほめられた!」

「一人じゃと? 嘘をつくでない!」

「嘘じゃないぞ!」

「嘘じゃ!」

「嘘じゃない!」

「ああもううるさい! 洞窟だから響くんだよ! 静かにしろ」

「「ごめんなさい」」

 素直に謝る子供二人

 やがて最奥へと到着した

 そこには一人の若い男が布団に寝かされていた

 見るからに具合が悪そうで、時折咳をし、吐血までしている

「とと様!」

「帰った、か、テン」

 息も絶え絶えといった様子の男

「大丈夫か?」

「む、客、か。すまない、立ち上がることもままならず」

「いやいい、休んでくれ。俺は大勇者のアイシス。あんたも苦しいだろうから単刀直入に聞く。あんたら何者だ?」

「ハッハッハ、本当に単刀直入、グフッ、ゲホゲホゲホ」

「とと様!」

「大丈夫だテン。久しぶりに笑ったよ。さて、俺たちの正体か大勇者。まさか大勇者に生きているうちに会えるとは、思わなかった。俺たちは忘れられた種族。もはや滅んだ種族だな。かつて人間族は五色の祖王と呼ばれる種族から分かれ、人間族という種族になった」

 この時点でアイシスは一人の男の顔が浮かんだ

 元居た世界を守る守護者。黄金人カイトだ

「ふむ、その顔を見るに知っているのか」

「恩人に少しだけ聞いたことがある。人間族の祖先の話を」

「なら話は早い。黄金人からさらに枝分かれし、月へ行った種族。それが俺たち天人だ」

「天人だと!? 精霊女王様に聞いたことがある。遥か昔に滅んでしまった種族。もはやただの一人も残っていないと聞いたが」

「俺たちはな、その最後の生き残りだ。この子が幼いころ、仲のよかった月兎の少女によって、俺たちは未来へと飛ばされた」

 それは更なる衝撃発言だった

 そして、彼らを飛ばした月兎こそ、兎神になる前のトコであった

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