リルカと守り人2

 クカミという少女は古の支配者の中で最も幼い

 そして最も強い

 だが蘇った彼女は全ての記憶を失っていた

 自分が何者なのかも、なぜここにいるのかも

「クカミちゃん、私のことも覚えてないの?」

「お姉ちゃんだーれ? 私、クカミっていうの?」

 不安なのか目に涙をにじませているが、リルカが頭を撫でて目線を合わせて優しく接すると、あっという間に懐いてしまった

「こんな状態のクカミちゃんを放ってはおけません」

「我らは主様に任せるのだ」

 シシララの言葉に守り人は全員うなづいた

「ひとまずここで人を待ってるから、一緒に待てるかな?クカミちゃん」

「うん、待てる―・・・。ねえ、ママって呼んでいい?」

「ええいいわよ」

 落ち着いたクカミはリルカの膝を枕にしてスヤスヤと眠り始めた

「まったく、今まで寝てたくせにまだ寝るんですの?」

「まぁそう言うなテテネネ、可愛いではないか」

「ザザビビ姉様、はい、それは確かに」

 幼女らしくスヤスヤ眠るその姿は守り人たちの母性本能を刺激した

 眠っているクカミを交代交代で可愛がっていると、ついに残りの三人がやってきた

 空間に穴が開き、そこから三人がひょっこりと現れる

「やっぱりいた! 姉妹たち、それに、主様と・・・。テテ、ネネ・・・。」

「ええ姉様たち、わたくしです、テテネネですわ!」

 守り人たちがようやく全員そろった

 今までは各自でメルカを探していたが、全員揃ったなら話が違う

 本来の彼女達なら力が分散するため全員が一緒にいる方が効率がいい

 お互いがお互いをフォローし合えるからだ

 今回は全員分かれていたためヴィータに掴まってしまった

 しかし彼女らの本分は共にいるだけで発揮されるものではない

「では主様、私達久しぶりに」

「何万年ぶりじゃ?」

「五十二万九千五百二十五日と一時間ニ十分と三十二秒ぶりです」

「ハハ、ニニミミ姉ちゃんよく覚えてるじぇ」

「ともかく、わたくしも久しぶりですの。姉様たち、よろしくお願いしますの」

「テテネネ、手を繋いでっさ」

 守り人たちがわいわいとこれから行われることについて口々に話していると、クカミが目を覚ました

「あれ? お姉ちゃんたち増えてる?」

 守り人は顔が全く同じで、メルカの姉たちらしくメルカにもよく似ている

 しかし彼女たちにはそれぞれ髪型や髪や目の色の違いなどの個性があるため、初対面のクカミにも見分けがついた

 そんな守り人が一斉に手をつなぐ

「はじまるわクカミちゃん」

 手をつないだ八人が光る

「な、何!? お姉ちゃんたちが光ってる!」

 危険だと思ったのか、マシュリンがクカミの手を引いてリルカの後ろに一緒に隠れた

 光が強くなり、目を開けていられなくなるが、すぐにその光は弱くなった

「あ、あれ? 一人?」

 八人はようやく元に戻れた

 本来守り人は一人

 しかし大昔の戦いで彼女は一度砕かれた

 そこから生まれたのがあの八人の守り人たち

 姉妹として活動していたが、本来ならばメルカに次ぐ力を持った異放

「久しぶりね、私の可愛い娘、ミルカ」

 メルカとよく似た顔の少女

「母様」

 それが本来の守り人、異放の姉ミルカだった

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