メルカとの旅9

 この街はクリスタルで出来ているみたいで、建物から続々と人が出てきた

 その人たちもクリスタルのような体を持っている

「なんだか昔に行った世界の宝石人たちのようですね」

 サニアさんが言う宝石人の世界は、宝石の体を持った人々がいる世界らしい

 ただここはその世界とは似て非なる世界っぽい

 宝石人の世界が宝石で出来ているのに対し、ここは全てがクリスタルで出来ている

 しかも光を吸収するらしく、そのせいで夜の間は光が一つもない真っ暗闇になる

 急に明るくなったのは日が昇り、光が一斉にクリスタルに反射したからだ

「なんかすごく見られてるね」

 恐らくクリスタルボディじゃない僕らを、ていうか他の種族を見たことないんだと思う

「なんだあれは」

「魔物か? それにしてはヒトに近い気が」

「と、とにかく警備隊に連絡を!」

 あ、これ捕まるやつだ

 誰かがすでに通報したのか、警備隊らしい人達に取り囲まれた

「あの、僕達あやしいものじゃ、ないんだけどなぁ」

「だ、黙れ! 何だその姿は! 魔物が化けてるに違いない! ひっとらえるぞ!」

 ああここはおとなしく捕まった方がいいかな

 みんなもそう思ったのか、全員彼らについて城へと向かうことになった

 どうやら王の判断をあおるらしい

「まぁ王に正体を明かしてこの状況を打破するしかありませんね」

 サニアさんの意見に僕も賛成

 彼らは仕事をしているだけだから倒すわけにもいかないしね

「はやくこい!」

「この! リディエラ様に何をしている!」

「あ、クロハさん、おとなしくしてね」

「うう、リディエラ様がそういうなら」

 あやうく黒いお姉さんが警備隊をボコそうとしたので慌てて止める

 警備隊の人もクロハさんが一瞬力を解放しそうになったのでかなりびくついてる

 このお姉さんの呪力が漏れ出すと大変なことになるから危なかったよ


 城に着くと城の兵に僕らの身柄は拘束された

 一応抵抗しないから縄で縛られたりとかはなかったけど、やっぱり捕まるのっていい気分ではないよね

「こっちだ」

 兵が案内したのは王がいる王宮

 その中の大きな部屋、要は謁見の間だ

 そして王座にいるひときわ輝く人、それが王だね

「その者達が突如現れたという・・・、いや、その方たちは・・・。宝石人たちから聞いておりましたルーナ様」

 王様が立ち上がってルーナ様、僕の叔母であるサニアさんに膝ま付いた

「宝石人を知っているのですか?」

「はい、彼女らとは世界が近いため、宝石の神を通してやり取りをしております」

「同じ神が管理する世界でしたか」

 どうやら宝石人の世界とクリスタル人の世界は同じ宝石の神が管理してるらしい

 その縁もあって、サニアさんのことは知られていたっぽいね

 かつての大戦争の時、サニアさんはルーナという名前で世界を巡っていた

 詳しくは知らないけどね

「この方たちは神々である。無礼があってはならん。丁重におもてなしをするのだ」

 王のこの一言で、僕らは怪しい一団からお客人になった

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