想像で創造する女神27

 急がなければならない理由があった

 胸騒ぎがする

 早く救世界に帰らなければならないと思った

「早く、もっともっと早く! お母さん!」

 プリシラの元々の両親はすでに消えている

 小さな世界の創造主だった両親は、プリシラに自分達の全てを注いで消えた

 その後は救世界に拾われ、救世の女神メシアによっていっぱしの女神にまで育てられた

 いわば救世界は故郷であり、その世界の主である女神メシアは母だ

 感じる。大きな大きな悪意が迫っている

「何をそんなに急いでるんすかプリシラ様! ちょっと待って欲しいっす!」

 力を使いこなせるようになったオディルスも、一応転移は使えるようになっており、いちいちウルのアイテムに頼る必要はなくなっていた

 しかしプリシラはその転移スピードをはるかに超えそうな速度で移動していくため、オディルスはついて行くのもやっとだった

「すみませんオディルス君。私に掴まって」

「はいっす!」

 オディルスの手を握るプリシラ

 そのまま転移を更なる速さで乱発させる

「もう少し、もう少しです」

 そして最後の転移が終わった

 救世界へとたどり着くプリシラ

 そこは昔と変わらず平和で、様々な勇者、聖人聖女、救世主や英雄が修行をしたり、楽しそうに過ごしていた

 保護された力を持つ子供達も、親代わりとなる救世界の人々によって幸せな生活を送っている

「よかった、何事もないみたい」

「考えすぎっすよプリシラ様」

 そこに一人の女性が飛ぶようにしてかけてき、いきなりプリシラに抱き着いた

「プリシラ! 愛しい我が娘! ああ、可愛い、私の娘可愛いわぁ」

「ぷはっ! お母さん!」

 救世の女神メシアは愛しい娘が帰って来たことを喜び、とにかく娘を可愛がることに集中した

「あの、もうそろそろよろしいですか?」

「あ、ごめんなさいオディルス君、お母さん、もう」

「あらあら、あれだけ甘えん坊だったのに」

「そ、それは言わないで下さい!」

 プリシラはひと時の楽しい時間を過ごす

「それでプリシラ? 私に会いに来てくれたの?」

「いえお母さん、この世界に何か変わったことはないですか? たとえば侵略者のようなものが」

「うーん、そんなのいないけど」

 特に何もなく平和

 だがそれも、この瞬間までだった

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