メルカとの旅8

 黒い黒い天体

 その中にこんなものがあるなんて僕は思っても見なかった

 それは数時間前のこと

 新しい世界にやってきた僕らは、あまりにも何も見えなくて、一瞬何かに閉じ込められたのかと思った

 なにせ光を魔法で作って照らしても、すぐに周囲の黒い何かに吸収されるように消えるんだ

「取りあえずみんな私から離れないで下さい。こんなに見えなくては、はぐれたらどうなるか分かりません」

 探知とかでお互いの位置がさぐれればいいんだけど、この中だと魔力自体が霧散するみたいで、そう言った繊細なことはできなくなっている

 取りあえず全員手を繋いで歩きだした

 僕の手を掴んでいるのはハクラちゃんとメルカちゃん

 ハクラちゃんは当然クロハさんともツナギ、メルカちゃんの余った手をサニアさんが掴んでいるみたいだ

 まるでお遊戯会のような感じになってるだろうけど、行方不明になるよりだいぶまし

「探知が使えないのは厄介だね。ねーねーリディエラちゃん、私ちょっと見てこようか?」

「え?だ、だめだよメルカちゃ」

 言い終わる前にメルカちゃんはスタタタと足音を響かせていってしまった

「どどどどうしよう!」

「落ち着いてリディエラちゃん。あの子なら多分大丈夫ですから」

 とりあえず動くとメルカちゃんが戻ってこれないかもしれないから、その場で座って待つことにした

 お互い顔も見えないほどだから、どれだけ近いのかも分からない

 少し伸びをすると、ぷにっと何かに触った

「はわわわわわ! だ、誰ですか! 私の胸をさわったのは!」

「あ、ご、ごめんハクラちゃん、伸びをしただけなんだけど、あたっちゃったみたい」

「な、なんだリディエラちゃんでしたか。驚かさないで下さい」

 そう言えばハクラちゃんって、怖いものが苦手だったね。どうやら真っ暗だからびくびくしてるみたい

 たぶんだけど、クロハさんが抱っこしてるはず

 それで普段より上に胸があってあたっちゃったのか 

 少しの間雑談していると、突然目が開けれないほどの閃光が辺りを照らした

「ま、まぶしい!」

「何ですかこれ! 幽霊ですか!? 幽霊なんですか!? ちびりますよ?! いいんですか!?」

 怖がりすぎたハクラちゃんがパニックになってとんでもないことを言ってるけど、だんだん目が慣れてきて周りが見え始めた

「これは、すごい」

「なんてきれいなんでしょう」

「うわぁ、すごーい」

 パニックになったハクラちゃんもこの景色を見て目を奪われた

 ここはとてつもなく大きな街で、その建物一つ一つが色とりどりのクリスタルや宝石で出来ていたんだ

「宝石人の世界に似ていますが、いえ、これはまったく別の世界ですね」

 サニアさんが言ってる宝石人っていうのも気になるけど、今はここがどんな世界なのか把握するのが先決だ

 まわりを見回していると、そこに先行していたメルカちゃんが戻ってきた

「突然光ったからびっくりしたよー。でも今見てきたとこ、なんか王宮みたいだったから行ってみよー」

 メルカちゃん、やっぱすごい・・・

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