芽吹き6

 世界の種を植え付けられた者たち

 その種が世界を創り出すことはほとんど知られていないが、アウルはそこに目をつけ実験的に数名にこの種を植えた

 結果は失敗に見えた

 拒絶反応により何の能力も持たなかった彼らは種に侵食され、体組織が破壊されていく

 それを見て興味を失ったアウルは、ろくに確認もせずに去った

 だが体組織が壊れていたかのように見えたのは、体の作り替えが起こっていたからだ

 これにより彼らの体は世界の種を受け入れることができるようになった

 そしてその中の一人はついに種が芽吹き芽へと成長したのだった


 ここはホラステッドという世界

 住む種族はタートイドと呼ばれる亀からヒト種に進化した種族たち

 魔力はあり、魔法を使う者もいる

 ヒト種はこの一種族のみで、温和な彼らは争いを好まない

 そのためウルに抵抗できず、好き勝手に暴れられていた

「あいつらまた!」

 まるで盗賊のようにタートイド達から食料や金目のものを奪っていく下っ端ウルたち

 この世界に戦える者はいないため、いいようにやられたい放題されているようだ

 タートイドたちの話を聞いたアーキアたちはすぐにでもウルたちを追い出そうと躍起になっていた

「数が多い! なんでこんなに下っ端がいるんだよ!」

 盗賊行為を働いたウルたちを捕らえて取ったものを取り返しながら叫ぶ

「こいつらはとりあえず救世界の牢に送っとくか」

 アモンは救世界でもらったアイテムを使い、牢へと直通になっている

 この牢は救世の女神メシアによって作られており、能力を封じるため下っ端ウルなら問題なく収容できる

「ふぅ、これでもう五十人か」

「多いですね」

「でもまぁ着実に数は減って来てると思う」

「ところでライナ、元に戻る気はないのかねぇ?」

「ないです。アモン様とおなじ炎属性ですもん」

 雷の精霊から炎の精霊に変わったライナはアモンと同じ炎を喜び、エーテが戻すと言っても戻ろうとしない

「まぁ悪影響はないからいいけどねぇ。元々雷の精霊なんだから、いざってとき炎を操れないこともあるよ?」

「大丈夫です。そこはしっかり練習してますから」

 ライナは炎の精霊になっていらいしっかりと練習し、今では普通に炎を操れるようになっていた

 精霊であるためそういった自然エネルギーの使い方にはどうやら長けているようだ

 そんな彼らに近づいてくるタートイドの商人たち

「ありがとうございます。おかげで子供達へのお土産が戻ってきました」

 商人たちは深々と頭を下げる

 喋り方や行動がゆっくりとしている彼らだが、戦う術はもっていないものの、実際鍛えて戦いを教えればかなりの実力者になるはずだ

 魔力の扱いに長けており、防御面ではヒト種の中でもずば抜けている

 だが彼らは魔法を争いには使わない

 平和でのんびりとした生活こそが彼らの心情だからだ

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