守り人31

 大衆食堂での聞き込みはおおむね上手くいったと言える

 なにせ主の情報がたった一つだけ聞けたのだ

「それでその少女はどこに行ったんだじぇ?」

「ああ、なんだか目が虚ろでな。フラフラっと外に出て街の西に歩いて行っちまった。心配で追いかけたんだが、少し目を放したすきに忽然と姿を消してな」

「ふむふむ、ありがとう! いい情報だったじぇ」

 タタムムは懐から金の塊を取り出すと男に渡した

「お礼だじぇ」

「ちょ、多い多い多い! これっぽっちの情報でこんなにもらえねぇよ」

 正直な男である

 そんなところも気に入ったタタムムはもう一つ金塊を取り出して渡した

「すごく聞きたかった情報だったから気持ちだじぇ。いいから取っといてくれ」

 タタムムは上機嫌で金塊を押し付け、そのまま大衆食堂を出て行った

 そんなタタムムの後を誰かがつけている

 フンフンと鼻歌を歌いながら主の向かったと思われる方向へと歩く

 そして生体剣を抜く

 今は支配剣レンディアムの姿ではなく、未剣TTMMのままだが、戦闘になればまたレンディアムに変化させることができる

 主と同じ顔や力を持ったあのクローンでなければレンディアムほどの力は必要ない

 タタムムは未剣の力を使って主の行動を予見した

「なるほど、もうこの世界にはいないじぇ。でも次に行った世界は分かったじぇ。やはり主様が直接いた場所に来れば辿れる!」

「お嬢ちゃん、こんなところで何してるんだ?」

 ここは路地裏

 大通りから離れており、声は届かない

 タタムムはいかにもなごろつきたちに前も後ろも道を塞がれた

「主様を探してるじぇ。でもここにはいないからもういくじぇ」

「へぇそうかい、じゃあここの通行料を払ってもらわないとな。金塊全部おいて行け」

「ああやっぱりだじぇ。悪い大人。ふむふむ、これは絡まれているという状況だじぇ」

「何余裕ぶってんだ!」

 怒った男の一人に手を掴まれる

 だが男の視界は突然反転し、気づくと地面にめり込んでいた

「な、何しやがったクソガキ!」

 タタムムに襲い掛かってくるごろつきども

 しかしタタムムにかなうはずもなく、全員が地面に突き刺さった

 当然尾行に気づいていたタタムム

 路地裏に誘い込んだのはむしろ彼女の方だった

「さて行くか。待っててくれ主様!」

 タタムムはめり込んだ男たちを踏みながら世界を渡った

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