法則外の妖精9

「ああ、感じておりました。貴方様の気配を。母と同じ気配を。王女様、本当に何と言ったらよいか。わたくしのような一界の精霊如きがあなたのような精霊王女にお会いできるなど思っても見ず」

「いやあのですねニュール姉さん。僕のお姉さんでもあるんだからそう言うのはちょっと」

「ああなんとお優しいお言葉、わたくし感無量でございます」

 駄目だこのお姉さん、涙まで流してまるで僕が神様みたいに崇めてる

 あいや神様にはなってるんだけど、実の姉にこう気を使われるというのもなぁ

「えと姉さん、この世界の精霊は姉さんだけって聞いたんだけど」

「はいそうですね。この粘液の精霊ニュールのみがこの世界唯一の精霊にございます。ですのでこのような世界に王女様が来られるなど思っても見なかったのです」

 うるうると涙ぐみながらニュールお姉さんはスッと僕に抱き着いた

 ぬるっとしてるけど優しい暖かさがある

「僕も姉さんの一人にあえて嬉しいよ」

 分かる。ニュール姉さんとちゃんと繋がっているのが

 様々な世界に散らばっている僕の兄弟姉妹たち

 中にはニュール姉さんみたいに一人で世界を見ている精霊もいるのかもしれないな

「大変そうだね」

「いえ、別段大変というわけでは。この子達も私に信仰心を向けてくれているので、力は有り余っております」

 確かに姉さんから感じる力はなんと僕の世界の四大精霊と同じくらいの力を感じる

 それだけここの住人たちの信仰心が篤いってことだ

 僕達精霊も神様と一緒で信仰心を向けられると力が増す

 魔力でも十分生きては行けるけど、信仰心を集めれば更なる力を得られるんだ

 テュネたちが強いのはそう言った理由もあるんだよね

「そうだニュール姉さん。母さんを呼ぶからちょっと待ってね」

 放してもらい、僕はすぐに精霊召喚の陣を作った

「え、ちょ、待ってください王女様、心の準備が、ああ」

 すでに召喚は始まって、母さんがボフンと出てきた

「あらリディちゃん。それにあなたは、まぁまぁまぁ、粘液の精霊ニュールですね? 可愛い娘、こちらへ」

 母さんはあわあわと慌ててるニュール姉さんに四の五の言わさせずに抱き着いた

「一人で大変だったでしょう? よく頑張りました。よしよし」

 母さんの包容力半端ない

「う、うぐ、ひぐっ、母様、うううあああんん」

 聞いたところによるとニュール姉さんは精霊の中でも新参らしい

 この世界もまだできたばかりで、ようやく文明が発達してきたところだ

 そう、ニュール姉さんは僕と同じでまだ子供なんだ

「ほら涙をぬぐって」

 母さんとヌルヌルで絡み合ってる姿はなんだかちょっとあれだけど、やっぱり親子での会話っていいもんだね

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