世界を巡るルニア3

 アルラウネの本当の名前はハーミア

 この国の王女だった

 なぜこうなったのかは本人もわからないらしいけど、ともかく養分にされてる人たちを助け出さなくちゃ

 でもこれ大丈夫なのかしら? 城の人が入ってるこの袋みたいな器官、ちょっと触っただけでもハーミアは敏感に感じ取ってる

 重要器官だったりしないのかしら

「皆さんを養分にしてまで、こんな姿で、生きながらえたくありません、一思いにやってください」

 本人はそう言ってるけど何とか元に戻す手段は無いかしら

 そう思って少し周りを探索してると何かの資料みたいなものを見つけたわ

 紙の束

 かなり急いで逃げたのか、それとも一緒に養分として取り込まれてしまったのか、その資料はこの子をこんな姿にした計画のようなものが書かれていた

 なになに、魔物との融合実験、秘検体、王女ハーミア

 記述の日付はハーミアによると数ヵ月前

 綿密に練られた計画だったみたいで、かなり詳しく書かれてた

「ルニア様、こっちの資料を見て下さい」

 そこには魔核と呼ばれる宝石について書かれていて、それをハーミアの体内に埋め込んだことが書かれてた

「これが彼女を魔物化させているようです。しかし最後の資料に書かれている書きなぐったこの言葉、実験は失敗した。ハーミアを魔物化出来たものの感情が不安定、とても兵器として使えるものではない・・・。それにあの魔核は他の魔物まで呼び寄せてしまったようです」

「そう、それでこの街は滅びたのね」

「街が、滅びた・・・? そんな! 民は!? 我が民はもう・・・」

 シクシクと泣き始めるハーミア

 私はこの子をなんとしても元に戻したい

 そのためには胸にある魔核をどうにかしないと

「ハーミア、その魔核を除去してもいいかしら?」

「はい、もちろんです」

 成功するかは分からない

 魔核を取り除くことでこの子が死んでしまうかもしれない

 でもハーミアは既に決意を固めてる

「それじゃあハーミア、痛いかもしれないけど我慢してね」

「はい!」

 目に宿っている強い光

 この子、強く育てられてるわね

 父親はさぞかし素晴らしい王様だったに違いないわ

 私はハーミアの胸あたりに浮かんで魔核を観察してみる

 赤黒い血のような色の宝石でしっかりと胸に埋め込まれてるわね

 それに触れてみると魔力をしっかりと感じた

 そこから魔物の魔力をゆっくりと吸い出す

 こう見えても魔族の祖たるお姉ちゃんの妹、この程度の魔力どうってことないわ

 魔力を吸い出しきると宝石はただの石に変わっていた

「う、うぐ」

「苦しいかもしれないけどもう少しよ、頑張って」

 今度はその石を傷を治しながら引きずり出した

「あぐぅ、く」

「とれたわ!」

 石を取り除くと段々と植物が土くれのように崩れ去って行く

 そして完全に崩れると元通りエルフの姿のハーミアが私の胸に落ちてきた

 苦しかったのか今は気絶してるけど無事みたい

 それに

「やりましたルニア様! 皆無事のようです!」

 城の人と思われる人たちが巨大な袋の中からどさどさと落ちてきた

 衰弱してるけど命に別状はないみたい

 ひとまずはほっと一安心ってところかしら

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