守り人18

 ニニミミはしっかりしているように見えるが寂しがり屋だ

 姉妹と離れることはあまりなく、常に誰かと一緒にいた

 そのためか姉妹に会いたくて仕方がなくなっている

「はぁ、主様さえ見つかればまた一つになれるのに」

 生体武器である本をぺらぺらとめくる

 そこに主の情報はなく、この世界もまた主がいないということはすぐに分かった

 だが放っても置けない

 この世界にもやはりウルが紛れ込んでいるらしく、混乱を引き起こしていた

「全くいい迷惑ですね。ひとまず無力化しておきますか」

 書かれている情報を元に数人のウルを見つけ出す

 固まっていたため全員を発見できた

「何だお前は、転移してきたということはそれなりの実力者か」

 漆黒のローブを被った男がニニミミを見つけるなり身構えた

「あなた達を排除させていただきます。世界に混乱をもたらすのはおやめなさい」

「何を生意気に!」

 男は部下三人に手で合図を送ると、すぐに三人はニニミミに攻撃した

 一人は剣で、一人は魔法で、もう一人は足から炎を出して蹴りをそれぞれ繰り出した

 だがニニミミが本をぺらぺらとめくるとその攻撃全てが消えた

 攻撃したという事象さえも消えてしまったのだ

「なんだと・・・」

 三人は驚き攻撃を止める

 そこをニニミミに突かれ本の中に封じられた

「なるほど、生意気な口を叩くだけのことはある」

 男は漆黒のローブを脱いだ

「本気で行かせてもらう」

 巨大な角が頭の左右から生える魔族の男

 その拳には傷がいくつも刻まれ、体中にも歴戦の傷があった

「俺は破砕のゲール。ウルが大幹部である!」

 ドンと足を踏み込んで拳を構えるゲール

 それに合わせるようにニニミミの本がペラペラと風にさらされているかのようにめくれる

「私は守護者ニニミミ、名乗りを上げるとは礼儀はなっているようですね」

「ああ、俺は強い者には敬意を払うんだ」

 ゲールがグッと拳を握り直すと地面を踏み込んで走り出した

 その走りによって地面は大きくえぐれる

「NNMM」

 本がめくれ、男が思いっきり打ち出した拳による衝撃波を別空間へと逃がした

「なるほど、それがお前の戦い方か」

「これだけだとは思わないで下さい」

 ニニミミが本をめくってそのページの力を使う

 すると逃がした衝撃波がゲールの腹部にぶち当たった

「ふん!」

 まるで予想通りとでもいうように筋肉を固めてその衝撃を真正面から受け止める

 鉄の塊をも砕くはずの衝撃波はゲールにとってもかなりのダメージがあるはず

 それでも腹部をぱんぱんと叩いてまるで平気な顔で立っている

「頑丈ですね。あの質量、隕石よりもインパクトがあったはずですが」

「鍛えてるんでな」

 鍛えてどうこうなるようなものではないが、実際ゲールは涼しい顔だ

 拳を撃てばニニミミの本によって力を逃がされる

 逃した力を当ててもゲールには効かない

 お互い攻めあぐねる結果となってしまった

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