アモンの旅14

 最上階についた

 そこには一人の男が腕を組んで立っている

 まるでアモンが来るのを待ち構えていたかのようだ

「お前が僕の仲間たちを攫ったのか」

「だとしたらどうする?」

「無論、戦って取り戻すさ!」

「そう簡単にはいかないよ」

 男はローブを脱ぐ

 アモンはその男の顔を見て口をパクパクとさせ目を見開く

「久しぶりだねアモン」

「お、お前は・・・、ベリアル」

 悪魔公ベリアル

 悪魔の中でも上位に位置し、アモンよりも力ある悪魔だった

「なぜ生きているんだ!」

「さぁ何故だろうね。戦ってその答えを勝ち取るといいよ」

 ベリアルは問答無用で襲ってくる

「俺はウルが大幹部、悪魔のべリアル! アモン、お前のような悪魔の面汚し、もっと早くに始末すべきだった」

「こんなところでやられてたまるか!」

 悪魔同士の戦いが始まる

 まずベリアルが魔力で作ったエネルギーの塊を、小手調べとばかりにアモンに投げつける

 それは難なく素手で握りつぶすアモン

「へぇ、成長してるね」

「そりゃそうさ、あれから何百年経ってると思ってるんだ」

 今度はアモンが後ろに回り込んで首を掴み、そのまま思いっきり投げた

 飛ばされながらも壁に足をついて衝撃を吸収、ベリアルの手による鋭い手刀が突きだされる

「つっ」

 その手刀はアモンの頬をかすめた

 ツーっと血が流れる

「強くなってるなアモン」

 ベリアルはそのまま手刀を横に振るう

 切っ先は首の皮一枚をかすめて外れ、アモンはそれに合わせるかのように縦回転で蹴り上げた

「ぐおっ」

 足の先が顎にあたってベリアルが廊下を転がって行き、そのまま壁を突き抜けて行った

「ベリアル、愛ってのは良いよ。僕をここまで強くしてくれたんだから」

「そ、そんなものなくとも、俺たち悪魔は強く生まれたんだろうが! だったら人間如きただの道具だろうが! 俺はそうやって生きてきた! 人間をいたぶるのは楽しいんだよ!」

「だから僕とは相いれないんだお前は」

 倒れているベリアルに近づくアモン

「なんでだ、なんでお前はそこまで強くなった」

「だから言ったろう。僕は人間に育てられたことで愛を知った。その愛は僕に大きな力をくれるんだ」

「ああそうかよ・・・。次会った時は、殺してやる! 仲間を目の前で殺して絶望させてからな!」

 ベリアルは閃光を放つアイテムを使った

 眩しさに目をつむり、再び開けるともうベリアルの姿はなかった

「ハァハァ、やっぱり手ごわい、もう少しずれてたら」

 首の傷からはドクドクと血が流れ出ている

 そこに治癒魔法を使ってふさぐと立ち上がり、仲間たちの元へと歩き出した

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