アモンの旅9

 グリーンハウスにいるのは精霊と妖精、さらには自然と共に生きるグレイたち

 彼らは共存し、この世界の現状を憂いていた

「アモン様も気づかれたかと思います。この世界の呪いの強さについて」

「うん、こんな中で生きていける人間なんて普通いない。何らかの超常が起きて死ぬだろうね」

「はい、しかし敵のグレイたちはその呪いを防ぐ手立てを手に入れました。まず初めに呪いについて・・・。この呪いは我々妖精族、精霊族が振りまいたものです」

「まぁそこは仕方ないと思うよ。これだけ虐げられていたんだから」

「そうですね。私達は殺される間際にこの呪いを振りまいたのです。殺された仲間たちの無念、それが呪いとなってこの世界中をおおっているのです」

「なるほどね・・・。じゃあ精霊や妖精を解放したとしてもこの世界は元通りとはいかないってことか」

「それに関しては何とかなるかもしれませんぞ。わたくしども自然と共に歩むグレイたちと精霊様や妖精様、協力して事に当たれば、きっとこの呪いも」

「とにかくまずはアモン様、あなたのお仲間を助け出すのが先決でしょう。そうなれば戦力も増強され、妖精や精霊の救出も容易になるはずです」

 アモンはうなづき、グレイの老夫婦が広げた地図を見た

「ここがあなたの仲間が囚われている塔です。ここからさらに奥へ行くと妖精が、さらにその奥に精霊が囚われています」

 エランダが指さす場所は工場プラントのような場所で、それぞれの場所に一つ大きな塔がある

 その内の一つにアモンの仲間が囚われているようだ

 ウルはこの世界で様々な実験をしているらしく、アモンの仲間が囚われている塔には異世界から連れて来られた者も多い

「なるほど、異世界人は確かに強い。それで先に開放して協力を仰ぐわけだね?」

「はい、私が偵察したところによると、囚われた異世界人はまずウルの協力者ではありません。どの子も、泣いていた・・・。助けたいのです」

 人間が進化した種族であるグレイ。それらにさんざひどい目にあわされてきたはずの妖精たち

 彼らはもとより純粋無垢な子供が好きだ

 その塔に囚われている者のほとんどが、強力な力を持っているとはいえ子供だった

「わかった。必ず助けるよ。その後は?」

「こちらの精霊の塔をお願いします。精霊達が外に出ればこの辺りの魔力を使って激しくかき乱せます。妖精たちではそこまでの力は使えませんから」

「よし、それじゃあ早速行こう」

 すぐに決断したアモンは装備を整えて扉から出て行こうとする

 その後ろ姿にエランダから声がかかった

「お待ちくださいアモン様。この方をお連れ下さい」

 すっとアモンの横に来たのは精霊の少女

「この方は精霊王女であらせられるレディナ様です。精霊達が力を使うために必要不可欠な方です」

「ああ分かった。この子は僕が守りながら連れて行くよ」

「その必要はないわ。わたくしこれでも王女ですのよ? 自分の身くらい自分で守れましてよ」

 強がってはいるが、その手は震えていた

 この子はまだ幼く、力こそ精霊の中でも最強ではあるが、心はまだ幼い

 戦いに向かうのは怖いのだろう

「王女様、では僕と共に来ていただけますか?」

「ええ、あなたにわたくしをエスコートする栄誉を与えます」

 優しいアモンの言葉に少し安心したのか、レディナはその手を取って歩き出した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る