守り人13

 マロナが先に動き出す

 まるで散歩でもしているかのような優雅さ、歩くような速さでゆっくりと

 警戒しているメメナナに手が伸びる

 とっさに危険と判断したメメナナはその拳を触ることなく回避した

「避けては駄目ですよ。芸術を作るにはこの手で」

「こねくり回すというわけか。ご婦人、あなたの力は」

「私の力は芸術、触れたものをオブジェクトにしますの。このように」

 今度は胸元から筆を取り出し地面を少しなぞった

 すると地面がグネグネと動き、ゴッホのヒマワリをほうふつとさせるような花のオブジェクトが完成する

「手で触れなくてもいいというわけか。少しでも触れればアウトというわけであるな」

「ふふ、避けきることなどできまして? 的は小さくとも、これなら!」

 胸元から複数の筆を取り出し、ナイフのように投げる

 それらをメメナナはアクロバティックな動きで躱し、地面を転がりながらも拳を空気に叩きつけた

 パンという音が周囲に響いて飛んできたナイフがボトボトと落ちる

「手から離れても効果を発揮するとは厄介であるな。しかし、そのような攻撃なら全く問題ないのである」

「そうです? 肩を見てみなさいな」

 メメナナが自分の右肩の違和感に気づいたのはそう言われてからだった

 ちらりと目線を移すと、肩がグネグネと変形している

「フフフ、いい形になって来ましたね」

「く」

 肩の可動域が変わったせいかメメナナの動きが鈍る

 しかしそこは異放の力を持つ守護者、自分の右肩を拳で殴ってえぐり取る

「な!? 自分の体を」

「ふむ、これで動くである」

「化け物!」

 吹き飛んだ肩から出る鮮血

 かなりの激痛が走っているが、メメナナはその痛みを我慢できる強い子だ

 肩をぐるぐるとまわして拳を打ち出す

「MMNN、空間固定、拳無限撃けんむげんげき

 拳が消えた

 次の瞬間マロナは何が起こったのか分からず立ったまま死んでいた

 メメナナはマロナに攻撃されながらも拳を空間に数多固定しておいたのだ

 それらが一斉にマロナの心臓めがけて集約された結果、大幹部芸術家のマロナは一瞬でこと切れたのだ

 だがこの攻撃はメメナナにも相応の反動があるため、肩からの出血が激しくなる

「く、やはり痛いであるな」

 マロナを倒したことでオブジェクトとなっていたこの世界そのものが元に戻って行く

 素材にされていた人々も当然元に戻った

「こっちだ! この子だよ助けてくれたのは」

 薄れゆく意識の中、メメナナは誰かに抱きかかえられて連れていかれるのを感じた

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