アモンの旅8
バイズーという世界は遥かに発展した科学によって成り立っている世界だが、自然を自分達のものと勘違いをしており、目に見えなかったはずの精霊や妖精を捕まえ、その生命力を無理やり引き出してこの世界のエネルギー源としている
ここに住むのはグレイという、アーモンド形の目に尖った顎、大きな頭、灰色の肌に長い手足を持った人間の進化の一系統である種族
自然と共に生きて進化した種族が仙人ならば、彼らは機械によって人工的に進化した種族といえる
科学ばかりを発展させすぎた結果、モラルや倫理を失った邪悪な種族だ
「う、なんて酷い世界なんだ。魔力がよどんでいる? いやこれはよどんでいるとか生易しいもんじゃない。これは、呪いだ!」
「はいそうなのですアモン様」
目の前に光の柱が現れ、そこから人型の女性がふわりと舞い降りた
「お待たせいたしました。案内役を仰せつかったエランダ、虹の妖精です」
確かに羽が虹色で、いかにも虹の妖精らしい姿
彼女は素早くアモンの腕を掴むと走り出した
「ここにいては危険です。私がここに現れたことを恐らくすでに掴まれているはずです」
グレイの科学技術は今まで見えなかった精霊や妖精の姿を見つけ、捕縛するほどになっている
進みすぎた科学は魔法と同じを体現しているかのようだ
アモンとエランダは彼女の能力で姿と気配を完全に断つ
精霊や妖精の女王たちが未だグレイに掴まっていないのは、彼女のこの能力によるところが大きかった
ひとまずの隠れ家となっている妖精や精霊達のアジト
今では少なくなってしまった木々が生える小さな小さな、林というのもおこがましい庭園
ここはグレイの中でも異質な、自然を愛している人々が唯一残してくれていた場所だ
この場所は他のグレイに気取られない
エランダの力で庭園をただの廃墟に見せているからだ
そしてここを管理しているグレイのおじいさんとおばあさんは、精霊や妖精の味方だった
「おお戻ったかいエランダちゃん。わしはもう心配で心配で」
「おじいさん、信じて待つことも大事ですよ」
「大丈夫ですデンスケさん。カヨさんもありがとうございます」
この老夫婦はグレイだが、人間からグレイに進化してもずっと教えを守り続けてきた異質なグレイたちの生き残りで、彼らは今でも他のグレイから隠れ住んでいる
そのため彼らには独自の器官が発達した
それが擬態能力だ
それも周囲に特定の電磁パルスを展開することで直接脳波に影響を与え、強力な擬態を行える
催眠の類のようだが、体もそれに合わせて形状変化するため、擬態に近い
彼らのようなグレイ種はそうやって何千年も生き延びてきたのだ
「この方が他世界からの協力者、優しい悪魔のアモン様です」
少し照れつつもアモンはそこにいるグレイたち、精霊や妖精に軽くお辞儀をした
ここは変わったグレイやグレイから逃げた妖精や精霊が集まる安全地帯、グリーンハウス
今のグレイの現状を嘆く人々が集う場所
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます