守り人12
メメナナがたどり着いた世界は全てが異様
空中に街が浮かんでいるかと思えば人が地面にめり込んだまま狂ったように笑っていたり、体が裏返しになっているのにびくびくと動き、生きている人間など、無秩序極まっている
「気持ちの悪い世界であるな・・・。いやこの気配、この世界は、変えられた、というべきであるな」
そこには微かに何らかの悪意を持って世界を変化させた力の残り香がある
メメナナはポケットから紳士のような付け髭、カバンから折りたためるシルクハットを取り出すと装着
背中に背負っていた曲がった杖をくるりんと手に納める
「さてそこなご婦人、この世界のありようはあなたの仕業であるな?」
目に宿る静かな怒り
「あらあらあら、こんなにすぐばれちゃうだなんてやるせないわぁ」
物陰から出て来る中世の貴族のような衣装をまとった女性
見たところ普通の貴族のような特に特徴のない姿だが、顔だけが女神のように慈愛に満ちている
それがこの場に違和感を与えていた
明らかな殺気を宿らせているにもかかわらず、彼女はまるで愛する者を見るかのような目でメメナナの前に立っているのだ
そして杖替わりにしていた傘をバサッと開くと日傘として使う
「あなた見たところ、この世界の住人ではありませんね。でもなんてことでしょう、あなたの冒険はここで終わってしまうのです。それはとても悲しいことですよね? 私の手で愛おしい愛おしい愛おしい生命を、命を奪ってしまう。悲しくて仕方がありません。それと同時に、何と甘美な快楽なのでしょう!」
女性の傘、それはよく見ると人間の皮で出来ている
しかもその皮はびくびくと蠢き、時折苦痛の声をあげていた
「吐き気を催すような悪! 吾輩の一番嫌いな人種である!」
杖をビッと女に向けると女はフフフと優雅に笑った
「そう、そう、そうですね。貴方から見れば私は悪、でもこの快楽は止められない。だってそうでしょう? 愛おしい者こそ壊したくなりますもの。それに何の罪がおありでしょう?」
「もう話すな。お前は吾輩が殺す」
「フフフ、いいですわ愛おしい方、その可愛らしい見た目通り、あなたはぬいぐるみにしてあげましょう! 私のお気に入りのぬいぐるみに。私はウルが大幹部、芸術家のマロナ。さぁ肉のオブジェクトにあなたもおなりなさいな」
マロナは優雅に手を広げ傘を地面に突き刺す。それと同時にメメナナも杖をクルンと空高くに放り投げて拳を構えた
「紳士衣装の吾輩は本気である。手加減などご期待なさるなご婦人」
「あら素敵ですわ。私と、芸術的なロンドを踊りましょう」
本当に、心の底からこの状況を楽しんでいるのであろう
それがさらにメメナナの怒りを加速させた
彼女は怒りが増せば増すほど心は静まり穏やかになって行く
構えた拳をスッと胸にあててこの世界の住人に勝手に誓った
敵は取ると!
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