大勇者と救世者11
風の都も悲惨な状況で、家々は焼き尽くされ、死体はそこかしこに転がっていた
どの死体もまるで内部から破壊されているようで、グチャグチャの死体とおびただしい血の量
既に腐臭がし始めており、通常の人間がこの場にいれば吐き気を催していただろう
そんな中でも彼女は一生懸命に死体をかき集めては地面に埋めていく
その背中からは悲しそうな気配を感じる
死体の数は数万人規模に及び、花の都ほどではないがやはり死体を埋めるのに時間がかかった
ここにはすでにウルはいないらしく、襲われることもなかったので次の街である蟲の街を目指して歩き始める
ふうとため息をつくようなジェスチャーをした後元気よく歩き出したが、突然複数の男を従えた女が目の前に立ちふさがった
漆黒のローブ
女はウルの大幹部と思われる
「あらあら偉いわねぇ。死体をちゃんと片付けるなんて。でもあれはわざと放置しておいたのよ? あそこで実験をするためにね。それをお嬢ちゃんは邪魔した。これどういうことか分かるわよね?」
仮面の女性は首をかしげる
「そう、分からないの? じゃ、分からせたげる。まずは手足ね」
女はローブを脱いで近づいてくる
真っ赤なボンテージ衣装を着た過激な恰好に真っ赤でカールがかった長い髪
真っ赤な口紅に血のように赤い瞳
女はニタッと口が裂けそうな笑みを浮かべると仮面の女性の手を掴んだ
「ボン!」
仮面の手が内側から弾けて転がり落ちる
「はいこっちもボン」
無事な方の左腕も弾けとんだ
しかし悲鳴を上げることも痛がる素振りも見せずに仮面はまた首を傾げた
「悲鳴も上げないのね。二度と何も持てないって言うのに、気にくわないわ。でも次は二度と歩けない。その次は二度と聞こえない、見えない、嗅げない、そして子供も作れない。傷口を焼いてそのまま放置してあげるから苦しんで死になさい」
フフフと笑い、次は足を、仮面を剥がして耳、目、鼻の順で破壊、最後に性器を破壊した
彼女が口を破壊しない理由は長く苦しむ声を聞くためである
それなのに仮面は一切声をあげることなく芋虫のようにただうねっていた
「なによこいつ! 苦しみもしない、声も出さない! 何の面白みもないじゃない!」
腹が立ったのか、女は仮面の無表情だった今はグチャグチャになった顔面に手を当てると、そのまま爆破した
それで動かなくなる仮面の女性
「ふん、強い力を感じるからプロフェッサーのいい素体になるかとも思ったけど、期待外れね」
死んだことを確認し、そのまま放置
女は再びローブを纏うと歩き出そうとした
だが禍々しい気配を感じて振り返る
転がった仮面を拾い上げた無表情で美しい顔の少女
真っ白な仮面を顔につけるとどこからともなく一振りの、何の変哲もない鉄の剣を取り出し、ただ素振りをするかのように横に振った
「あえ?」
ボンテージ女の銅が横に裂け、ぐちゃりと地面に落ちる
一緒にいた男たちも同じようにその場に崩れ落ちた
「う、うご、ぐううああああ!! わだじの! 下半身がァアア!!」
女は上半身だけで腸をまき散らしながら痛みで暴れる
「こ、この爆炎のスカーレットがぁあ! こんな小娘に」
スカーレット・アニング
自分の世界で数多くの人々を殺した稀代の殺人鬼
ウルには自ら入りとにかく人を殺し続けた
そんな彼女にそっと近づき耳打ちをする仮面の少女
「・・・そんな馬鹿なこと、お前は!」
仮面の少女はスカーレットの頭を踏みつぶし、スカーレットはそこで生涯を終えた
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