アモンの旅3
癒しを得た後は再び聞き込みのためにこの世界を巡ることにした
ハーフリンクたちに聞いたところ、この村は国境に近いらしく、数キロ進めばインセクトイドという昆虫人族の国に行けるらしい
優しくおとなしい種族だが、敵とみなされると集団で襲い掛かられるようで、しかも強靭な肉体をもっているため普通の人間ではまず勝ち目はないと注意された
そもそも敵対する気はないので友好的に行こうと考えるアモン
争いは元々嫌いであるため特に問題はないだろう
「色々ありがとう」
「いえ、こちらこそ竜の脅威から救っていただき感謝に耐えません。是非ともまたお越しください」
次にこの村に来るかどうかは分からない
永遠に近い寿命を持ち、自ら世界を渡るほどの力を有す悪魔アモン
それでも再び、生きて再開できるだろうか?
今はそんなことも心の奥底に仕舞い、攫われた仲間たちの情報を収集することに全力を注ごうと決める
少し歩くと立て看板が見えた
それはうっそうとした森林地帯を指しており、インセクティアと描かれている
恐らくそれが国の名前なのだろう
森に入ったが道はちゃんと整備されている上に、道沿いには明らかに人の手が加わった花壇が続いている
インセクトイドたちは植物を育てることに長けているらしく、花々は彼らの趣味だろう
そんな美しい花壇を楽しみつつアモンは街らしきところまで歩いた
道が広くなってきて、街道を歩くインセクトイドが時折にこやかにお辞儀してくるので、アモンもお辞儀をし返す
非常に温厚な彼らは花の蜜で作った団子などもアモンに手渡したりと、敵対さえしなければかなり友好的なのだろうことが分かる
「ありがたくいただくよ」
蜜団子をくれたのは蜂型のインセクトイドらしく、女性だった
一見すると華奢そうだが、その肩には狩りをしたであろう巨大な猪が下がっている
おそらく数百キロはあろうかというサイズだ
それをたった一人で運んでいるのだ、それだけで彼女らの強靭な肉体がうかがい知れるというもの
「街はもうすぐですよ、ここまでお疲れ様です」
そう言ってハーブティーを差し出してくれる蝶型のインセクトイドの女性
歩みを進めるごとにやはりインセクトイドたちの往来は増えてきた
その中にはアモンでも苦戦しそうなカブトムシやクワガタ型のインセクトイド、カマキリ型のインセクトイドと言った屈強な人々もいる
彼らに喧嘩を売るなど死ぬのが怖くない猛者かあるいわ馬鹿か、自殺志願者かといったところだろう
そんな彼らを通り過ぎると花のゲートが見えてきた
どうやら街の入り口のようだ
インセクトイドたちはアモンを見るとみんなにこやかに挨拶を交わしてくる
アモンモそれに答えて挨拶しかえした
(これだけ友好的な種族なら情報収集もしやすそうだな)
その辺りを歩いていたダンゴムシ型のインセクトイドの男性に話しかけてみる
「すみません、少しお聞きしたいことが」
「んあ~? いいぞ~、俺でよければ~」
ゆっくりとした喋り方だがにこやかに答えてくれる
「実は仲間が行方不明になったのです。この特徴に当てはまる人々を見ていませんか?」
「ん~? どれどれ~」
絵には自信があるアモン
まるで写真のように写実的に描かれた仲間たちの顔
だがインセクトイドには人間の顔の区別がつかないらしく、しきりに首をかしげていた
「すまないね~、君とこの子達の顔の差が分からないんだ~。多分子供だろう~ってことは分かるんだけどね~」
すぐに見つかるとは思っていない
それでも落ち込む
「いえ、ありがとうございました」
インセクトイドたちに聞いても仲間たちの情報は手に入らないだろうと、アモンは早々にこの街を出て次の国を目指すことにした
彼らの話によると、さらに森の奥に行けば妖精たちがいるらしい
妖精なら人間の顔の区別はつくだろうと言われた
「役に立てなくてごめんね~、この街にはいろいろ名産もあるから~楽しんでね~」
にこやかにお礼を言い、アモンは仲間たちのため急ぎ足で街を抜けて行った
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