鬼神たち1
危なかった
襲い掛かって来た敵に幻術が効かなければ全てが消え去るところだった
崩壊した世界の片隅で九人の鬼神が立ちすくむ
自分達以外の全てが消えた
愛する島の民も、いつもみんなの後をついて来ていたスネコスリのネネコも、自分達の生徒たち、島の外も恐らく同じ状況だろう
何もかもがなくなり壊れた
世界は崩壊したのだ
「ハクラちゃんたちに合流しないとっす」
「ええ、それが得策ね」
「敵は必ず取りますわ・・・」
「許さない、あいつ」
九人は思い思いの怒りを胸に、悲しみを背負い旅立つ
九人の鬼神の力を合わせた神力、それをゲートを開くための力として使う
これはサクラに教わった技だが、完全な形での使用はできなかったため、インターバルに一か月を要する
そのため別世界に行けばそこで一か月は生活しなけらばならない
しかも親友であるハクラ達と合流できるかどうかもわからないのだ
あまたある世界から二人がいるたった一つの世界へたどり着かなけらばならない
並大抵の精神力ではこの旅は続かないだろう
だが九人とも鬼神になるという厳しく気の遠くなるような努力を重ねてきた
それに比べれば親友たちにたどり着くということなどどうと言うことはない
「きっとすぐ会えるっす。そんな気がするっすよ」
ゲートをくぐって初めて世界の外へ
こんな形で旅をしたくはなかったが、世界が滅んだことを伝えなくてはならない
そしてそれを引き起こしたあの女に報いを受けさせるため
アカネは爪が食い込み血がにじむほど拳を握る
ハクラの、クロハの愛した故郷を破壊した者を決して許さない
そして何より守れなかった自分自身を許せないでいた
初めて訪れた別世界は自分達の常識が遥か及ばないほど発展した都市が栄えていた
黒族の国も発展していたが、この世界の技術はそれと同じかそれ以上かもしれない
九人供目を丸くし、また皿のようにしてあちこちを目を回しながら観察する
「ここは人間しかいないのでしょうか?」
「そうですわねキキ、見たところ人間だけのようですわ」
「てかヤバくね? すっごいファッションじゃん!」
マリハはさっそくこの世界の服屋らしき施設に飛び込もうとしたが、それをキキとシエノに止められた
「今そんなことしてる場合じゃないでしょう」
「今そんなことをしている場合ではありませんわ!」
二人に同時に言われ、マリハもハッとして反省した
「そうだったよ。ハクちんにあわなくちゃ」
落ち着きを取り戻したマリハも周囲の人々に聞き込みをして回る
彼らが鬼神を見ても驚いていないのは、この街以外には鬼人がいるかららしい
誰もが鬼人を見慣れているため、見た目が鬼人と大差ない鬼神たちを見ても驚かないのだ
ただ聞き込みをしてもやはり無駄だった
この世界にハクラ達は来ていない
というのもあの二人は群を抜いて美しい
たとえ別の街や国に現れようとも、この情報が発達した世界ならすぐに噂になっているだろう
「一か月っすか・・・。でも仕方ないっす。一か月後、また世界を渡るっすよ」
アカネの前向きな意見に全員賛同し、次の転移が可能になるまでの間、この世界で起きている問題を解決しながら過ごすことになった
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