リディエラの世界
その日もまた平和な一日だった
鬼ヶ島は鬼神たちのおかげで守られ、始まりの鬼神サクラや守護者カイト、龍妃アンミツ姫などの活躍により世界の混乱もないに等しい
妖怪族の族長たちもウルの情報を得てすでに動き始めていた
そんな中である
突如ソレは襲来した
世界全てに暗雲が立ち込め、サクラの前に現れたのはサクラにとって顔なじみの存在であった
「あなたは・・・。そんなまさか、生きていたなんて」
ソレはサクラの頬に優しく触れる
「ああ、またあなたに会えるなんて・・・、リルカ」
リルカと呼ばれた女性の手をサクラも握り返す
そしてサクラは砂のように崩れ去った
一瞬のことで一緒にいたカイトもアンミツ姫もなんの反応もできず、ただただ茫然と立ち尽くす
そんな二人の前に音もなく、見えているのに気配もなく近づくリルカ
二人共蛇に睨まれた蛙のように全く動けない
こえを出すこともかなわず二人はサクラと同じように砂となって消えた
リルカは小首をかしげると、その虚ろな目で三人の残骸を見つめる
しばらくするとまた動き出し、どこかへと光が消えるようにその場から去って行った
あとに残された三人の残骸
風によって少しずつ、砂ぼこりとなって、舞い上がる
リルカは何もわからない
ただ消せと、殺せと言われたからやった
そこに善の心も悪意もなく、ただただ言われたことをやっただけだ
リルカは虚ろな目で世界を見る
何もわからない
自分がなぜここにいるのか、なぜこの世界の人々を虐殺しているのか
前にいるのは妖怪族の族長たち
次期族長となる自分たちの子供や国の人々を族長たち全員によって行われる秘術、時渡りによって逃がした
すでに半数の族長が砂となって殺されている
「まさか、リディエラ様のいない間に、このような事態になるとは・・・。申し訳、ございません、リディエラ、さ、」
下半身がすでに砂となっていた九尾族族長タマモ
そのまま上半身も砂となって崩れる
続いて残っている族長たちも次々に殺され、やがて妖怪族の国には誰一人としていなくなった
数分後の鬼ヶ島
突如現れた一人の女性により鬼人、鬼仙、誰も彼もが崩れ去る
この異常事態に鬼神たちは怒り狂い、サクラに禁止されていた鬼神としての本来の力を暴走させて立ち向かったが、その甲斐もむなしくリルカ一人に全滅させられた
国々は次から次へと滅ぼされ、最後に残ったのは妖精や精霊が住まうリディエラの故郷のみとなった
「きたのですね、創造の異放者リルカ・・・。なぜ、なぜこの世界の住民を殺したのです! 彼らはただ平和に・・・。あなたが望んだ形で過ごしていただけなのに!」
リルカはその言葉が理解できていないのか、首を傾げた
「そうですか、あなたはリルカであってリルカではないのですね・・・。私達はここで消えるでしょう、ですが必ずや私の娘リディエラが」
最後まで言い切らないうちにリディエラの母シルフェインは砂になった
この日リディエラの世界は消えた
リルカは何も語らず、ただ世界がゆっくりと消えていくのを眺めて首をかしげた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます