神と白黒鬼神28
すっきりした顔になって落ち着いたハクラちゃん
いきなり思いっきり力を使ったせいか動けなくなったので、クロハさんに背負われている
二人共満足そうで何より
メトちゃんが羨ましそうな顔をしていたので、いずれ天使にすると決めたサニアさんがおんぶしてあげた
まだまだ甘えたい盛りであろうメトちゃん
こうして見るとサニアさんとこの子は姉妹みたいに見える
そのまままっすぐ歩いているとエルフの集落らしき切り開かれた場所にたどり着いた
あ、もう囲まれてる
目がいいみたいだ
「よそ者め! 監視達をどうした! まさか、殺したのか」
「殺してません。問答無用で襲ってきたから動けなくはしてますけど」
「ふん、よそ者の言うことなど信じられるか!」
やっぱりこっちも聞く耳持たない
またも問答無用で襲ってきたから、今度は僕らは反撃した
まあ反撃って言っても動けなくなるよう痺れる魔法をちょちょいって使って、里全体にいるエルフを痺れさせた
「ぐ、卑怯、もの」
エルフたち全員が動けなくなったから悠々と集落を探せた
竜を悪と決めつけて狩るよう指示した紳士風の男
竜を捕まえるために魔法を教えたって言ってたけど、なんで竜を捕まえているのかは分からない
そしてこの集落にその男がいるなら、竜の居場所もすぐわかるかも
フラザニアさんの心配も解けるはずだ
「こっちにエルフとは違う反応がある」
僕はその気配がある木をくりぬいてできた家の一つに入った
その中には紅茶、いやこの香りはハーブティーか、そのハーブティーを嗜んでいる紳士風の男を見つけて問いかけた
「あなたが竜を捕まえるよう指示した人ですか?」
「人というのは、自分に仇成す者を悪とする傾向があります。竜たちはいいように動いてくれた。少し悪意を植え付けるだけで、そう、いとも簡単に」
男はハーブティーを優雅に啜る
そしてティーカップを置くと立ち上がり杖を手に取った
「さて、悪意とは伝染病のように拡大し、シミのように広がるもの、あなた方にも私の悪意を感染させてあげましょうか」
杖をクルンとまわし、何らかの力を使ってくるのが分かった
「無駄ですよ。ここにいる者は全員が大きな善の心を持っています。だからこそ私達は戦っているのですよ。あなた方のような真の悪意を持った存在と」
「これはこれは、まさか私の悪意が効かない者がいるとは思いませんでした。誰しもが小さいながらも悪の種を持っているものです。それがまあなんと、光しか持たないとは、いや、知らないの間違いですかな?」
「悪意ならたくさん触れました。私はもはやそんなものに惑わされないだけです」
「フフ、あなたは強いですな。名乗っておきましょう。私はウルの大幹部が一人、悪性のステイン。あなた方に免じてここは引くとしましょう。竜たちはこの先の洞穴で動けなくして閉じ込めてあります。一匹たりとも死んではいませんのでそこはご安心を」
この男、竜を集めて何がしたかったんだろう?
「目的は果たしました。ではまたいずれ・・・。一つ、言葉を。いいですか? 世界には悪を必要としているところもある。悪意が正義であることもある、と言うことをお忘れなく」
男は帽子を脱いで恭しくお辞儀をすると闇に溶けるようにして消えた
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