異女神1
自分の核となって消えたツキのことを思うルニア
彼とは敵同士だったが、自分の中にいたときは親しみやすく、長年連れ添った親友のような安心感があった
一度は世界全てを消し去ろうと企み、サニアとルニア姉妹、そして多くの協力者の手助けによって彼の野望は打ち砕かれた
その最後、彼は自分を産んだ世界を創り出す異放者と再会を果たす
両親である彼らはツキのことをいつくしみ、最後に愛を注ぎ続けた
その結果彼の心には愛が宿り、今のツキという存在としてルニアの中でひっそりと過ごしていたのだった
彼はルニアが最大のピンチに陥った時、自動的に内部から力を与え、ルニアを新たなるステージへ引き上げようと思っていた
それは結果成功したのだが、ルニアの核が砕けたのは自分でも予想外だったらしい
そして彼は自らの命をルニアに与えた
彼なりの贖罪であり、また、ルニアに対する愛の表現でもあった
それが分かったルニアはツキに大きな感謝を、最大限の敬意をもって彼にもらった核のある心臓部を撫でる
「ありがとうツキ・・・」
「ルニア様」
大切な何かを失ったであろうことが彼女の寂しげな表情から伝わり、天使たちはそれ以上何も言わなかった
「さ、行くわよ!」
少し経ってルニアは元気よくそう言った
から元気なのはみんなが理解していたが、彼女はこれでも女神だ
悲しんでばかりはいられない
別世界では未だウルの脅威にさらされているところがいくつもあるだろう
そんな世界を救うためにルニアは力を得たのだ
ツキから受け継いだ異放の力を正しいことに使う
彼もそれを望んでいるだろう
ルニアは転移門を開いて一斉に飛び込んだ
突然の360度青空の景色
どう考えても空中に放りだされていた
それぞれ慌てる様子もなく天使たちは翼を開き、ルニアは権能で飛び、子供達は自分達の能力で難なく浮遊した
全員が飛べることで問題は無くなったが、今度は地面がない
そこは大海のはるか上空のようで、このまま下に降りれば海に飛び込むことになる
「陸地を探しましょう」
ルニアの一言ですぐに全員が陸地へと飛び始めた
海は広いが数キロほど飛ぶと大陸が見えてきた
「あそこに降りましょっか、一応警戒しておいて」
「はい」
一番目のいいアスティラがまだ遥か彼方にほんの少しだけ見えている陸地を確認する
「浜辺には何もありません。静かなものです」
「おっけ、じゃあ着地するわ」
危険もなさそうだと判断し、一斉に着陸
ふわりと地面に降り立つが、あまり慣れていなかったラナだけトスンと尻もちをついた
「大丈夫?」
ソラが手を差し伸べて立ち上がらせた
仲のいい二人を見てルニアも嬉しそうに笑う
「さて、異放の力のおかげでウルの位置も手に取るようにわかるわ」
その言葉で天使たちはすぐに警戒する
この世界にはウルがいるということだ
「えーっと、ここと、ここと、それからあの島国、あとはそうね、あら、そこね」
ルニアが何やらブツブツと独り言を言っているのを不思議そうに見つめる三天と子供達
突如ルニアは指から光線のようなものを出し、どこかへとむけて放った
「よし命中!」
光線を放って数秒後、ルニアの前に目を回したローブを着た数人の男女がどこからともなく現れた
「はい完了っと。悪しき心の持ち主はこいつとこいつとこいつね。あとの二人は無理矢理って感じかしら」
何もかも突然のことで頭が追い付いていない天使二人と子供二人、ただ一人リィリアだけはこの状況を理解していた
「なるほど、この世界にいたウルをひとまとめにここに召喚し、さらに心を読み取って悪と無理矢理やらされている者とを分けたのですね?」
「ん、そゆこと~」
ニッコリ笑ってルニアはリィリアにグッドポーズをとる
「この三人はウルに関する記憶でも消してふん縛って元の世界にでも送り返しときましょう。記憶からしてろくなことして来てないわこいつら。で、この二人は完全に被害者ね」
ルニアの見事な権能によってウルに苦しめられていたこの世界も、被害に遭い無理矢理働かされていた二人も助け出せた
ルニアの力はもはや圧倒的というしかない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます