神と白黒鬼神27

 エルフの国はマーメイドの国から結構離れてる

 まあ深海からまず陸に上がらなきゃいけないし、そこからさらにほとんどこの星の裏側に行かなくちゃいけないからね

 とはいっても僕らなら一瞬で着く

 フラザニアさんは何度かエルフの国に行ったことがあるみたいで、その記憶を頼りに転移することになった

 こういったことができるのも僕の力とサニアさんの権能があるからなんだ

 記憶を読み取ってそこから転移するための情報にする

「すぐ着くから一応警戒しておいてね」

 皆に一応言っておいて僕は転移を開始

 一応誰にも見られないところで転移したからマーメイドたちも驚かせてないだろう

 誰もいないことは確認できてるしね


 一瞬で到着したエルフの国は他世界でもよくあるようにうっそうとした森の中だった

 ただすでに魔力を感知されたのか、エルフたちが姿を隠して取り囲んでいるようだった

「あの、話を聞きたいだけなんです!」

 僕は大きな声で叫んでみた。すると木々が揺れて十数人のエルフが僕らを取り囲みながら降りてきた

 それぞれが弓や短剣、レイピアなんかを構えてる

「何者です? ここは神聖な森、あなた方のような人間が来るような場所ではありません、早々に立ち去りなさい」

 確かに僕とサニアさんは今人間に化けている

 でもハクラちゃんとクロハさんはそのままだ

 鬼人は目にも入っていないってことなのかな?

「立ち去らないならこの場で死んでもらいます。森もいい栄養分を得ることでしょう」

 なんだろう、ここのエルフは僕の世界のエルフ止まったく違う気がする

 ずっと僕らに高圧的で、見下してるような目をしている

 僕の世界に住むエルフのルニサニアさんたちなんかはすごく優しい目をしているのに

「あの、僕らは竜を退治する方法を教えたって言う人に会いに来ただけなんです」

 そう言った瞬間に弓の矢が放たれて僕の肩に突き刺さった(ように見えるだけで実際には刺さらない)

 痛がる振りをしているとハクラちゃんがキレた

 これは、まずいです

「私の大事な友達を傷つけましたね?」

「まずいです! リディエラ様、緊急回避行動を! 全員この場から即刻逃げなさい!」

 クロハさんが大慌てでエルフを含め全員を逃がそうとしたけど、僕らを逃がすだけで手いっぱいだったみたいだ

 周囲の森数キロ範囲が完全に凍り付き、中心にいたエルフたちは氷の中に閉じ込められ、驚いた顔で固まっていた

 それでもハクラちゃんの怒りが収まらない

 すぐに彼女に抱き着いて落ち着かせようとお試みる

「大丈夫、大丈夫だから僕は! ほら落ち着いて、怪我もしてないから!」

「そうですハクラ! 落ち着きなさい!」

 必死になって止めたことでようやく真っ赤に光っていたハクラちゃんの目が元に戻った

「ハァハァ、ごめんなさいリディエラちゃん、お姉ちゃん」

 小さな体にこれだけの力があるんだ、うっかり世界を滅ぼしかねないなこの子は

 ひとまず凍っちゃったエルフは大丈夫そうだ

 氷もこの暖かさならすぐ溶けるし、放っておこう

 彼らが来た方向は大体の見当はつくから今度はそこに向かって歩くことにした

 多分集落か何かがあると思うんだよね

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