大勇者と救世者4

 二人がウルの本拠地へ帰って行った同時刻、街の反対側でも大規模な戦闘が起きていた

 レイドと利善が向かっていたそこには幹部クラスの敵が三人来ており、その配下数百名によって街を破壊されている

 幹部たちはそんな様子を楽しげに見ていた

「なぁルド、あのでかいの俺が殺していいか?」

「好きにしなよ。僕はあっちの結界使いでもやろうかな? アッシュは?」

「あたしは適当にやるさ。できれば子供、子供がいいねえ。お、あそこのちっこいのいいねぇ、泣かせがいがありそうだ。そうだねぇ、まずは指先から切り刻んで行こうか」

 三人の幹部は三人とも人をいたぶるのが好きなようで、特にアッシュと呼ばれた赤髪の女性は子供の悲鳴が何より好きらしい

 数十人のウルの雑魚を相手に戦うレイド

 彼女の放つ水の振動波は相手の内部に浸透し、内臓器官にダメージを与える

 対抗する術は雑魚たちにはほとんどなく、二発も喰らえば起き上がれないほどのダメージを受けた

 そんなレイドの前に降り立つ剥げて太った下品な笑いを浮かべた男

 ズベルドという快楽殺人鬼で、女性を多数拷問し殺してきた最低の男だ

 変身したレイドが女性とわかるや嬉々として殺そうと立ち上がった

 体格差は圧倒的だが、ズベルドの能力にとって体格差などあってないようなものだ

「グヒヒヒヒ、どんな叫び声かなぁ?」

 涎を垂らしながらレイドの悲鳴を聞くため能力を発動する

 ぶわっと広がる布のようなもの

 それはレイドの顔以外を包み込んでしまった

「な、なにこれ?」

 巨人化が解け、元の人間形態へと戻る

「グフ、なかなか可愛いなぁ。よし、まずは腕だ」

 バキンッ!

 布が閉まってレイドの両腕があらぬ方向を向いた

「あ、アアアアアアアアアアアア!!! 痛い! 痛いいいい!!!」

 激痛が走る腕

 悲鳴を上げるレイドの顔を見て舌なめずりをしながら喜ぶズベルド

「んんん、いい、いい声だなあ。グフ、グフフフ」

 男はさらに布を締め上げる

 この布の能力はどんな能力を発動していたとしても包み込んで消してしまう

 自由自在に伸縮するため体を包んで潰し殺すこともできるのだが、悲鳴をより長く聞くためにゆっくりと締め上げるのが彼のポリシーだった

 ギシギシと骨や筋肉が悲鳴を上げる

 巨人化しようにも能力が発動しない

 その間も肋骨や足の骨がバキリと音を立てて折れていく

 折れた肋骨が内臓を傷つけたのか、レイドは吐血する

「グヒヒヒヒヒ、いいぞいいぞ、やっぱり女をいたぶるのはキモチイイイ!」

 恍惚とした表情で大笑いしているズベルド

 だがその時彼の肩が何かに切り裂かれて腕がボトリと落ちた

「ギェエエエエ!! いでぇ! 俺の腕! ぐうううああああ誰だ!」

 ズベルドが攻撃してきた者を確認しようと振り向くと首がコロンと転がり落ちてズベルドの体がどさりと倒れ込んだ

 それによりレイドの拘束が解け、気絶したレイドも倒れた

 そんな彼女を支え、一瞬で怪我を治すとゆっくりと床へ寝かせる

 レイドを救った何者かは他に戦っている者たちを見つめ歩き出し、敵へと狙いを定めた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る