逸脱した女神14
(おい、おい! しっかりしろルニア! 君の核は砕かれたが僕がいるんだ。僕を核にしろ!)
遠いどこかから声が聞こえた
(耳障りな声・・・。私は眠いのに話しかけないで欲しいわ)
(ルニア! 眠っちゃだめだ!)
ずっと声が頭に響く
冷たくなる体をその声がまるで暖かく包み込んでいるかのようだ
ルニアはその声に耳を傾けてみる
(君とは敵同士だった。かつて僕は愚かな過ちを犯した。愛を与えられていないと思っていた。だが違ってたんだ。君もそうだろうルニア? 君には愛してくれる家族がいる。愛している家族がいる。戻ろうルニア。僕が君の核になるから)
ルニアは声のする方に手を伸ばす
命の輝きを放つ眩しい太陽のようなその声の主を手でギュッと掴んだ
そのとたん体に体温が戻り、手足の感覚を取り戻した
フッと目を開けるとそこには涙を流して自分を囲む天使と、幼い二人の少女の顔があった
胸元を見てみるが、服以外に穴が開いていない
自分は体を貫かれ、女神の核たる心臓部を抜き出され、砕かれたはずだった
それなのに生きている
本来ならば核を砕かれれば如何に女神であろうと消滅する
現に遥か昔の戦争の際はそれにより幾柱の神々が消えて行った
ルニアは内底に耳を澄ましてみる
しかし今まで聞こえたツキの声は聞こえなくなっていた
「ツキ・・・。ありがとう」
立ち上がるルニア
自分の核を砕いた男は既にいない
しかしルニアには男の位置が手に取るように分かった
そして
「来なさい」
ルニアが一声かけるとグニャリと空間が歪んで先ほどの男が目の前に立っていた
男は驚いた顔をしつつも再び立ち上がっているルニアを見て目つきを鋭くし、拳を構えて戦闘態勢に入った
「まさか核を砕いてなお立ち上がるとはな。侮れないものよ」
スーッと息を吸うと男はまた光よりも速く動きルニアの胸を貫こうとした
しかしルニアはいとも簡単にその拳を止め、男の腕を消した
「・・・」
男は肘から先が消えた腕を見ても痛がりもせず、筋肉に力を入れて止血してもう一方の拳を構えた
「先ほどとは違うというわけか・・・。名乗っておこう、私はリ・エンシュウだ。今は負けを認めるとしよう、次はこうはいかん」
エンシュウは懐から小刀を取り出すとルニアに渡す
「再開の約束だ。次に会った時、君を殺す」
「ふん」
小刀を奪い取るように受け取るとエンシュウはまた軽くジャンプして空高く飛んで行ってしまった
「お、追わなくてよいのですか?」
「大丈夫よ、あの程度ならまた来ても返り討ちにできるから」
先ほどとは違う力を感じる自分達の主
その力強くも優しい気配に自然と天使たちは跪いて頭を垂れた
「ちょ、何してるのよ!」
「女神様、我らよりいっそうの忠誠を誓います」
三人の天使は深く深く、新たな女神の誕生に喜びを感じた
異女神ルニア、それは大いなる聖の力を持った女神として再誕した、ルニアの真なる姿となった
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