大勇者と救世者3

 街を襲ったウルの末端たちがあらかた片付いたころ、白いフードの三人組が現れた

 そいつらは実力者であるレジスタンスの面々を瞬く間に行動不能にしていく

 一人は吐いた息で石に変え、一人は楽しそうに人の手足を引きちぎり殺さず放置し、その苦しむ様子を楽しむ

 最後の一人は自ら積極的には攻めず、近づいた者の関節のみを外して行動不能にしていた

「おいガルリド、もっと暴力を楽しめ! なんで動けなくするだけなんだ?」

「ダグラス、俺は別に人を傷つけることを楽しいと思ったことはない。お前のその性格には虫唾が走るよ」

「ふん、一番暴力的な力を持ってるくせに使わないとは宝の持ち腐れだな!」

 石化の吐息を吐く者は黙々と息を吐き続け、残りの二人は言い争っている

 その争いから名前が判明した

 圧倒的怪力を誇っている男がダグラス、間接を外し無力化しているのがガルリドという名前のようだ

 ガルリドの方は戦いに消極的で、むしろ嫌がっているように見える

 反してダグラスは人をなるべく殺さないよう体を引きちぎっていた

「やめろ!」

 そこにアイシスが駆け付ける

 惨状を見たアイシスは奥歯をギリリと噛みしめて三人を見た

「これはお前たちがやったのか?」

「当り前だろ! くくく、俺は女の悲鳴が好きでな。お前も少しずつ千切って悲鳴をあげさせて」

 ポロリとダグラスの両腕が肩口から落ちる

「グワァアアア!! 俺の、俺の腕ぇえ!」

 黄金に輝く刀をスーッと鞘に納めるアイシス

 黄金狐の鎧を着ていた

「ぐ、ぐぞぉお! よぐも、よぐもぉお!!」

 ダグラスの出血は激しく、その内ゆっくりと動かなくなり息絶えた

 数多くの人間を拷問して殺していた殺人鬼ダグラスの人生はここでひっそりと終わった

「さぁ次は誰だ?」

 居合の体勢のまま残りの二人を睨む

 その内の一人、石化の息を吐く方がゆっくりとフードを脱いだ

 蛇のような目の少女

 彼女はおびえたような目でアイシスを見ていた

「この子はウィレイ。ウルに攫われた子供達の一人だ。攫われた中に友達もいるらしくてな、その子を傷つけると脅されてこの戦いに参加している。お前にこの子が殺せるか?」

 ガルリドが少女の身の上を話す

「なんで俺にそれを聞かせた?」

「お前からは力を感じる。圧倒的な力を。ダグラスは見測れなかったようだがな。俺たちは戦いたくてここにいるわけじゃない。俺は女房を人質に取られていて逆らえない・・・。もう一度問う。お前に、俺たちが殺せるか?」

「殺すわけないだろ? 答えは分かり切ってる。俺は救う、困っているなら救うさ! 俺は大勇者だからな!」

 ガルリドとウィレイはアイシスに光を見た

 自分達を救ってくれるであろう光を

「そうか、ならば俺たちは待つ。幸いウィレイの力は人を殺さないことに長けている。その石化も壊さないよう一日置いておけば解ける」

「あ、あの、ごめんなさい」

 ウィレイは謝るがアイシスは彼女を全く攻めず笑顔で彼女の頭を撫でた

「大丈夫、必ず助けに行くからそれまで少し待っててくれ」

「うん!」

 二人はそのままウルの本拠地へと帰った

 アイシスを連れて行こうにも彼女一人が行ったところでまだ勝ち目はないだろう

 それほど本拠地には危険な幹部や大幹部がひしめいている

 ひとまず街の混乱は収まったのでアイシスはレイドたちの元へ戻った

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