神と白黒鬼神19

 まわりの人に聞いてみると、女王はいつでも謁見できるらしい

 しかももう僕らに気づいているらしくてむしろ歓迎されながら連れていかれたよ

 そりゃそうか、これだけの力を持つ神に鬼神がいて気づかないわけない

 抑えているとはいえね

「それではこちらからお入り下さい」

 恐らく城だと思える大きな巻貝型の建物

 超巨大巻貝に造られた城らしい

「うわ、おっきいですね」

 今の小さなハクラちゃんからしたら確かにかなりの大きさだけど、君の家も大概だと思うんだよね

 一応鬼ヶ島の姫だから当然家もそれなりに大きい

 まあ居住してるのは一区画だけで他は使用人やら会議室や休憩室などなどと言った場所になってる

 この城も見た感じそんな構造になってるみたいだ

 入城してからはたくさんのこの城で働いている人たちに見られながら歩いた

 誰もがどうやら僕らの正体に気づいたみたいで黄色い声援が飛んでくる

 恥ずかしいけどちょっと気分がいいかも

 この世界でも精霊はかなり尊敬されているらしくて、神様にしても神殿がたてられるほど信仰はされてるみたいだ

 ここの神様は海を司る神様が三柱いるらしくて、ポセイドン、その息子トリトン、ネプチューンの三柱

 サニアさんが言うには三柱とも今この世界自体にはいないとのこと

 まあ見守ってはいるみたいだ

 

 案内されたのは食堂みたいなところ

 そこにはすでにたくさんのごちそうが続々運び込まれていて、その奥に小さな少女がデンと構えて座っているのが見えた

 彼女はぴょんと椅子から降りてこっちに走ってきて土下座する勢いでお辞儀をしてきた

「女神様! この度はわが国にご降臨下さり誠に、誠に、その、えと、あの、わ、私はヴァニリアと申します!」

「無理しないでいいのですよ? 私達は戒めにここに来たわけではないのですから」

「そ、そうなのですか? よ、よかったぁ・・・。私てっきり何か圧政を引いてしまったのかと・・・。あれ?でもあなた様はネプチューン様ではないですよね? ポセイドン様もトリトン様も男神ですし・・・」

「私はサニア、能力の女神というものをしています。ポセイドン兄様の妹神にあたる神ですね」

 恐縮しまくってるリヴァイアサン少女のヴァニリアちゃん

 この子が間違いなくこの国の女王だね

 女神二柱に鬼神が来たとあっては確かに何か悪いことをしてしまったのかと勘繰るよね

「で、ではこちらにはどのようなご用件で?」

「ウル、という悪を追っているのですが、この世界に今悪さをしている何者かはいませんか? もしくは突如魔物が現れたり、おとなしいはずの魔物や神獣が暴れたりなどの異変は?」

「いえそのようなことは・・・。あ、そういえば」

 ヴァニリアちゃんは少し前に奇妙な恰好をした旅人がこの国に訪れたことを語った

 その旅人はローブを被っていて姿は見えなかったけど、声から恐らく女性

 ただ相当変なやつで、害はないけど皆警戒していたそうだ

 その旅人はひとしきりこの国の観光を楽しんでから、およそ三日ほど前にこの国を出てどこかへ行ってしまったらしい

「それで旅人はどちらに行ったか分かりますか?」

「はい、恐らくですがこの国の副都であるヴォルクカッカという街です。海底火山跡地にできた街でして、豊かな鉱物資源が採れる場所なのです。そこにはレッディア伯爵という者がいますので、彼女に聞いてみてください」

「ありがとうございます。そうだ、ついでなのでこの国に加護を振りまいても?」

「え!? いいのですか?」

 この国、というかこの世界はかなりいい世界だと思う

 王はしっかりとした政策をとっているし、人々の笑顔も絶えない

 こういう国にこそ僕ら精霊の加護は与えられるべきだよね

「じゃあいくよ」

 僕は精霊神として国中、つまり世界中にいきわたるように加護を与えた

 主に水の加護を与えたから、これからもっと豊かに栄えるはずだよ

 ヴァニリアちゃんにものすごーく感謝されながら僕らはヴォルクカッカという街を目指して泳いだ

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