世界に選ばれし者たち8
エーテ組は観光をしながらウルがこの世界にいるかどうかという情報を集めることになった
この国はそこまで広くないため一日もあれば回れるだろう
「さてまずはあそこに行ってみるかねぇ」
「酒場? 俺たち未成年だぞ?」
「あらそうなの、私の世界ではもう成人の年齢だけどそうさねぇ、まあお酒を絶対に飲めっていってるんじゃないから、ほら、見たところハーブティーや果実水みたいなのも置いてあるみたいだよぉ。りえちゃんは果実水でいいよねぇ」
「うん」
酒場に入った三人はキョロキョロと中を見回した
特に絡んでくる者もおらず平和そのもの
犯罪もかなり少ないこの世界ならではの光景だ
席に着くとおススメの食事とそれぞれ飲み物を頼んだ
りえはオレンジジュースのような柑橘系の飲み物、アーキアはこの国で慣れ親しんで飲まれているマオティーというお茶
そしてエーテはお酒を飲むのかと思いきやりえと同じジュースを頼んでいた
「なんだジュースじゃないか君も」
「お酒を飲むとは言ってないねぇ」
料理と飲み物が運ばれ食べる三人
料理はこの国で採れた野菜や肉を使ったゴーヤチャンプルのような料理で、野菜のほのかな苦みが肉とぴったりと合う美味しい料理だった
ジュースの方の味は完全にオレンジジュースで、アーキアの頼んだマオティーはジャスミンティーと同じ風味だった
料理が少し脂っこいためマオティーはかなりあっていたようだ
「ああ美味しかった、次はどこへ行こうかねぇ」
「いや情報収集するんだろ?」
「あ、そうだったねぇ」
「フフ、エーテさん忘れっぽい」
思わず笑ってしまうりえの頭を撫でながらエーテはその酒場の主人らしき若い男性に話しかけた
「少し聞きたいことがあるんだけど」
いつもの間の抜けたような話し方ではなく、自分の魅力を最大限に使った聞き込み
それにより男性は堰を切ったように話し始めた
聞いていることも聞いていないこともである
それによるとこの国では特に何も起こったりしてはいないが、隣国であるモスラドという国では何やら異人が訪れた話でもちきりらしい
彼もこの国に来た商人から聞いた話で、その異人は様々な面白いものをモスラドで披露しているらしい
よくよく聞いてみるとどうやら手品のようだ
手品というものがまだ発明されていないこの世界
魔力も使っていないのに起こる不思議な現象
異人はその国でかなりの好待遇として王宮にまで招かれたそうだ
「うーん、別にウルとは関係なさそうだけど一応報告はしておくさね」
酒場を出ると三人はとりあえず観光へとしけこむことにした
場面変わってレノンナ達三人
べっとりとアモンに抱き着くライナに腹を立てつつもしっかりと情報収集をしているレノンナ
真面目である
「あら、ねえあれ」
道を歩きアモンのほっぺにキスをしようとし、それをアモンに嫌がられながらもライナは周りをしっかりと見ていたようだ
彼女が指さす方向には犬のような耳と尻尾の生えた少女がいた
ボロボロの恰好だが誰も目にとめない
やせ細っているのでろくに食べ物を食べれてもいないのだろう
明らかに孤児だった
ライナはアモンから離れると少女の傍に行き、先ほど買った肉を包んパンを少女に渡す
「え? い、いいの?」
搾りだしたような声で涎を垂らしながら聞く少女
ライナは微笑みながらうなづいた
パンを受け取った少女は大喜びで頬張りあっという間に平らげたのだが、どうやら慌てて食べたせいでのどに詰まったようだ
「ほら慌てないで、これを飲みなさい」
ライナは次にジュースを渡す
「ゴクゴク、んぐ、あり、がとうおねえちゃん」
そのままライナは少女の手を引いて戻ってきた
「あんたもいいとこあるのね、でもどうするのその子?」
「もちろんアモン様と私の子供にしますけど何か?」
「いや無理でしょ! 私らウルと戦ってるのよ?危険すぎるじゃない!」
「大丈夫、この子なら」
ライナは少女の頭を優しく撫でる
突然のことで困惑しきった少女はどうしていいかわからずアモンを見上げていた
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