利善とレイドの異世界旅7
一時の戦いが終わり、城への道が開かれた
回復を終えたレイダスを立たせると、首輪の少女と機械に操られていた少女をレイドに任せて城の中へと侵入した
「何が待ち構えてるか分からない。気を抜くなよ」
リーダーであるモーリスは緊張で手に汗をかきながらも先頭を歩く
先頭が一番危険なのは言うまでもないが、しんがりであるレイダスも同様に危険である
この二人は実戦経験が豊富で、こういったことには一番慣れているため緊張してはいても油断は無い
城はなぜか凍えるほど寒く、真夏のようだった外とは比べ物にならないほどの気温差だ
「寒いな」
吐く息は白く、手足はかじかんでくる
それでも誰一人として歩みを止めなかった
この世界を滅ぼした元凶、それを倒す一歩手前までようやく来れたのだ
レイドと利善以外はこの世界で数年戦い続けてきた
犠牲者も多く、長らく停滞していた戦線だったが、それも利善とレイドがこの世界に来たおかげでようやく時が進んだのだ
ウルを打倒するという固い決意が全員を動かしていた
「ここがどうやら頂上のようだな。恐らく王の間。各自気を引き締めるんだ」
モーリスはゆっくりと扉を開け、部屋の外よりも寒く、吹雪いている王の間へと突入した
部屋の中心、そこの王座に一人の少女が氷漬けになっていた
「何だこれは・・・。この子がウルの大幹部の一人なのか? 何故凍っている」
「分からないが、どう見てもチャンスだろう。これで大幹部の一人が倒せるんだ」
レイダスは大剣を構えると一気に振り下ろした
ガキィイイン
耳が痛くなるような音が響いたが、氷にはヒビ一つ入っていない
「なんて硬さだ。俺の腕が痺れるほどか」
それでもレイダスは何度も何度も大剣を振るった
しかしどれだけ強力な攻撃を繰り出そうが氷は割れることはなかった
それどころか傷一つですら残らない
「こんな氷は初めてだ。俺の力ではどうにもできない」
「俺の能力でもダメだろう。俺は守るほうに特化しているからな」
同じく利善も楓も打開する策はなかった
「ここまで来て足止めとは・・・」
その時急に氷に音が響き始め、その直後突如として氷は粉々に砕け散った
「うおっ! 何が起こってるんだ!」
モーリスは驚き、全員を守るため鎧を展開
それに続くように利善も空間の力で守りの壁を作り出した
しかしそこから特に攻撃は来ることはなく、氷の中で眠るようにして封じられていた少女がドサリと倒れ込んだだけだった
「生きているのか?」
モーリスは鎧を展開したまま恐る恐る少女に触れる
驚くことに少女の肌は暖かく、しっかりと息をしているようだ
「これが大幹部エイブス? その力も不明とされてきたが、氷使いなのか?」
少女を抱きかかえてみる
その体は華奢で、少し力を入れれば壊れてしまいそうだ
しかもその気配には全くと言っていいほど悪意も何もない
ウルの大幹部にしては純粋な気配しかなかった
「この子がエイブスとは思えないが・・・。ではこの子はなぜこのようなところで氷漬けにされていたんだ?」
レイダスも困り、とりあえずは少女が目を覚ますのを待つことにした
少女が氷の中から出てきてから数時間が経った頃、外で待っていたレイドたちを呼びよせて少女の様子を見た
ウルだった首輪少女、名前はテトラというらしい。彼女もこの少女のことを知らず、エイブスにも会ったことはないらしい
ちなみに機械に洗脳されていた少女は、テトラが言うにはティーリーというらしく、いうことを聞かなかったため脳にあのような機械を取り付けられたそうだ
そのティーリーも未だ目覚めないため、氷漬けの少女の情報が皆無だった
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