逸脱した女神2
その男は恐らくハーフエルフね
人とエルフの気配が混ざってるもの
でも正義を重んじるエルフ系統の彼がなぜウルなんかに?
真に平和な世界を目指してるって言ってたし、どう考えても騙されてる
「ねぇ、あんたウルが今までどんなことをしてきたか知っているの?」
「知っているに決まっている。平和活動さ。これもその一環だ。私の部下たちは皆故郷を何らかの形で失った者たちばかりだ。彼らのためにも私はここで引くわけにはいかない。たとえ勝てぬ戦いであろうとな!」
「あんた名前は?」
「ラエトリア。誇り高きハーフエルフの剣士だ!」
ラエトリアはレイピアを抜き放つと私に向けた
私は翳していた手を降ろし、そのレイピアを指先でつまんで粉々に砕く
「あ、ああ、私のミスリル製レイピアが・・・」
ミスリルだろうとオリハルコンだろうとヒヒイロカネだろうと、今の私の前では何の意味もなさない
砂を固めて作ったようなものだもの
これでどれほど実力差があるのか理解してくれたはず。と思ったけど、彼は今度は魔法を撃ってきた
でもそれらがたとえ直撃しようとも私には傷一つ与えることなんてできない
「くそ! くそ! なんでだ! 私は常に正しくあろうとした! 全ての世界の平和を願うアウル様の元様々な善行を成してきたんだ! 私は! 私はただ、もう一度、妻と子供達と一緒に・・・」
彼は膝を落とし泣き崩れた
「ほら立ちなさい。あなたは間違ってない。唯一間違っているとしたら付く相手よ。ほら、ウルがしてきたことを見なさい」
私はお姉ちゃんから借りた力を使って彼にビジョンを見せた
それはウルの悪意が様々な世界で行なってきたことだった
「これは・・・、こんなことが・・・、だがアウル様は私を救ってくれて、私の部下達にしてもそうだ・・・。全てうそだったのか」
ようやく理解してくれたみたい
アウル、それがウルのボスの名前
悪意の塊と言っていい邪悪な者
人の心を操り、人をとにかく陥れて貶めるのが好きな世界の敵
「なぁ、私はこれからどうすればいい?」
「そうね、まずはウルは抜けなさい。部下達と一緒にね。もしそれで困るようなことがあるならここに行きなさい」
私は一つの装置を彼に渡した
これがあればきっと大きな助けになるはず
「それとこれ」
今度は空間収納から一振りのレイピアを取り出した
「これは神剣ムーンドリップ。私の神力を込めてあるからその力は無類よ。何せ破壊の女神だもの私」
「破壊の・・・」
一突きすれば体調が破壊され、二突きすれば細胞を破壊。三突きすれば存在が破壊される
彼なら正しく使えるはず
「女神、様、ありがとうございます! 私はこの剣できっと多くの人々を救うと約束します」
「ええ、頑張んなさい」
この世界に来ていたウルは彼とその部下だけ
彼の部下たちはウルの本拠地に帰ったみたいだから、これからが正念場ね
なにせそこから抜け出すつもりなんだもの
でもいざという時のアイテムも渡してるしきっと大丈夫
「ルニア様、本当によろしかったのですか? あのような物を与えて」
ウルの本拠地に部下たちを迎えに行ったラエトリアの後ろ姿を見つつ、リィリアちゃんが質問してきた
「大丈夫よ。私の目に間違いはないわ」
「はい、そうですよね」
リィリアちゃんも彼から悪い気配は感じなかったみたいね
この子、聖なる力の化身みたいな子だから、そう言ったことには敏感だもの
まぁなんにせよこの世界で彼らも暴れたりはしてなかったみたいだし、世界の種が奪われたことは気になるけど、今はどうしようもない
世界の種の使い道自体はアウルしか知らないみたいだから、とっとと取っ捕まえて吐かせればいいのよ!
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