勇者の成長14

 完璧なメイク、そしてぴったりと似合った衣装により三人は今まで以上に注目を浴びる

 鬼たちは三人を見て感嘆の声を上げていた

 行く先々で上がるためにどこにいるのかが一目瞭然だ

「なんだかスカートってのは歩きにくいんだな。うーむ、これが女の子らしい格好か・・・。俺には似合わないんじゃ?」

「何言ってるし! あーしが完璧に仕上げたんだから似合わないわけないっつの!」

 自信たっぷりなマリハによってアイシスも胸を張って歩いた

 誰も言い寄ってきたりはしない

 それほどまでに三人の美は整っていたのだ

 まるで手を出してはいけない芸術作品のようで、まわりはただ見惚れるばかりだった

「やっぱ歩きにくい気がするんだけど・・・」

「あんたら見られることになれてない訳? 勇者に魔王にその参謀っしょ?」

「ああいやそのな、衆人観衆の中演説したりとかは別にもう慣れてはいるんだけど、こうやって女の子に見られるってのが全然慣れなくてさ」

「ああなるほど、そんなものは慣れてしまえばいいのだよ!」

 マリハはぽんとアイシスの肩を叩いて自信を持つよう励ました

「あーうん、マリハさんはどうなの? その、男性経験とか」

「あ、えと、うん、タハハハハ、それはまぁ置いといてもう少しで目的地に着きますわよオホホホホホ」

「ないんですね」

「ああああもう! そうだよないよ! 何か知んないけどなぜか寄ってこないんだよ! あーしってばこんな完璧美少女なのにおかしくない!? おかしいっしょ!」

 どうやらかなり悩んでいたらしく、堰を斬ったように滅茶苦茶にぶちまけ始めた

 

 数時間後、すっかり日も暮れ始めたころにようやくマリハの愚痴がとまった

「ふぅすっきりした! じゃああーし帰るね~」

「「「え!!??」」」

 すっきりした顔で帰ろうとするマリハを慌てて止める三人

「あ、ごめーん、すっかり忘れてたし。アハハハ!」

 ようやくその場から動き出したが、すっかり日が暮れ、昼食が夕食になってしまった

「ここここ、あーしおススメの店なんだけどさ、から揚げ専門店で、あたしから揚げにめがないんだよね!」

 興奮しすぎたのか途中で口調が元に戻るマリハ

 どんどんテンションが上がっていき、もはやハクラ達が昔から知っているマリハに戻っていた

「ああもう我慢できなくなってきた! 早く行こう!」

 マリハはとんでもない怪力で三人をまとめて持ち上げるとそのまま店へと乗り込んだ

「ちゃーーっすおやっさん! から揚げ五十人前ね!」

「おーマリハちゃん、今日も来たのかい。そこ座ってな、すぐ揚がるからよ」

「うん!」

 椅子にポンポンポンと座らされて目を回していると直ぐに大量のから揚げが乗った大きな皿が運ばれてきた

「う、っわ・・・」

「多いですね」

「うん・・・」

「え、食べれるっしょこれくらい。足りなかったらまた頼むからさ」

 涎を垂らしつつマリハは取り皿を三人に回し、すぐに取り皿にから揚げを取り分けていく

「これ! このタレをつけるとマジでうまい!」

 そのタレはカリッとしたフライドガーリックが入っていて、ほんのり辛味がある

 それにつけて食べてみるとサクッジュワっとした食感が病みつきになる

 三人は一気にこのから揚げの虜となり、次から次へと口に頬張った

「う、うますぎる!」

「うんうん!」

 可愛らしい恰好をした二人ががつがつ食べ、エレガントな少女はその見た目通り優雅に食べている

 そんな姿も他の客たちは見惚れじっと見ていた


 数分後、全てのから揚げが大皿から消え、次なる大皿を頼まれた

 かなりの量だったがマリハと三人は全てを平らげることができた

「こんなおいしいから揚げは初めてだったよ」

「ああ、凄くうまかったな」

「ええ、配達もしているみたいなので今度頼んでみましょう」

 配達は当然転移装置で行なわれる

 魔王城にも直通の装置があるので揚げたてがいつでも食べれるだろう

「いい名所を紹介してもらったよマリハさん。今日は本当にありがとう」

「いいっていいって、それよりさ、メイクのやり方教えるからちょくちょくしなよ?」

 マリハに言われた通りしっかりとメイクのやり方を学んだ三人は今後も自分磨きに生を出すことに決めた

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