勇者の成長12
そしてその日の夜のこと
夢うつつの中蛇の舌の音が聞こえてきた
シュロロロシュルルルとアイシスの寝室に響く音
「この音、蛇か? まさか敵?」
アイシスはベッドから起き上がると音の鳴るほうへ歩く
しかしいきなり景色が変わって、いつの間にかとてつもなく大きな蛇の背中に乗っていた
「なんだこれは・・・。一体何が起こってるんだ?」
シュロロルルルという音が直ぐ耳の傍で聞こえ、後ろを見るとそこに蛇の尾を持った少女が立っていた
「フシュルルル、いいねいいね、わたしゅの力を受け取るにふしゃわしい膂力、力、フシュシュシュシュ、大勇者ちゃん改造計画ここに極めり!でしゅしゅ」
大きな力を感じるアイシス
彼女が次の力を与える役割を持った女神なのだとすぐに分かった
「あの、あなたは?」
「フシュ、わたしゅはミコ、十二獣神が一人でしゅろ。いいかね大勇者、ここまで来たらあと少しでしゅ。わたしゅの力は大きくて危険でしゅから、普通に渡したのじゃ危ないんでしゅ。でも今の大勇者ならきっと大丈夫、わたしゅの力を受け取るにふさわしいのでしゅよ」
アイシスはミコを見てときめいた
可愛い、ただひたすらに可愛いのである
今までの女神達も十分に可愛かったが、ミコはアイシスのハートにぴたりと合致していたのだった
「さてとでしゅ、大勇者とわたしゅの力は非常に親和性が高いのでしゅ。というのも大勇者、君は蛇人、竜人が先祖にいるようでしゅね」
「え、そうなんですか?」
「シュロ、どうやら十世代前が蛇人、十二世代前が竜人でしゅ。だからこそリュコとわたしゅの力がしっくりくるはずなのでしゅよ」
「なるほど、確かにこの場所、俺の力が増してる気がします」
ミコは嬉しそうな笑顔でうなづく
「ではわたしゅの力を受け渡しゅけど、しっかりと気を強く持つのでしゅよ? まぁ問題はないと思いましゅが念のためでしゅ」
「はい!」
ミコが手を差し伸べ、アイシスはその手を取った
すると巨大蛇がゴゴゴと動き出し、その遥か彼方にあった顔が鎌首をもたげるようにこちらに迫った
その星をも丸呑みしそうな巨大すぎる口を広げるとアイシスを飲み込み、超巨大黄金蛇の力が一気に流れ込んできた
「くっ、これ、は、中々にきついな」
「頑張るでしゅよ。大丈夫、大勇者たる君ならきっとこの力をすべてのみ込んでくれると信じてるでしゅ。ウワバミのように!」
どんどん流れ込む力
アイシスは自分が書き換えられているかのような感覚になり、意識も朦朧としてくる
景色がくるくると回り、酔っぱらったようにフワフワとした高揚感に気持ちよくなってきた
「すごい、凄い力だ」
「うんうん、うまく全部飲み込めたみたいでしゅね。さてではこの力のしぇつ明をしゅるでしゅ」
指と尻尾をピンと立てて説明口調になるミコ
「この力は蛇のように力強く、全てを丸め込み飲み込む力なんでしゅ。というのもシュルル、相手の力を取り込んで自分のものにして返せるんでしゅよ」
反射させる力に似ているが一度相手の力を口から摂取する必要がある
しかし悪いことではない
何せ口から摂取すること相手の力を完全に自分の力とすることができるからだ
制限はあるが汎用性は十二分に高いと言える
「ありがとうございますミコ様!」
「うんうん、もう一つだけ言っておくことがあるのでしゅよ」
「はい」
「君はわたしゅの子孫でもあるのでしゅよ」
「え!?」
「十世代前の蛇人はわたしゅの子でしゅ。だからこそこの力は君本来の力でもあるのでしゅ」
それを聞き、アイシスの目から一筋の涙が零れ落ちた
「え、え、なんで泣くのでしゅか!」
「いえ嬉しくて。確かに精霊女王は俺の母親でもあり大好きだ。だけど本当に血がつながっている家族ってのを俺は知らないんだ。だからあなたが俺のご先祖様と知って嬉しくて」
「フシュシュシュ、わたしゅはいつも君を見てるでしゅ。呼べばいつでも顕現してよしよししてあげるでしゅよカワイイ孫!」
「あの、おばあちゃんと呼んでも?」
「ふしゅ、おばあちゃんは嫌でしゅ」
「そ、そう、ですか。すみません調子に乗りました」
「あ、違う違う違うでしゅよ。おばあちゃんだとわたしゅの見た目にそぐわないから、ミコねえしゃんと呼んでほしいだけでしゅ」
アイシスの笑顔が輝く
「はい! ミコ姉さん!」
「フシュシュルル、むず痒いけど心地よいでしゅよ」
ミコはアイシスを抱きしめ、夢の世界から元の世界へと戻った
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