無能の異世界人7

 馬車に揺られること半日、ベイルクートという少し大きな街に来た勇者含めた六人

 どうやら何かイベントが開かれているらしく広場が人でにぎわっていた

 その人だかりをかき分けて何が行われているのか見ると、五人組のいかにもなオタク風の男たちが何やら不思議なダンスを踊っているのが見えた

「すごいぞ、あんな熱情的なダンスは初めて見る!」

「いい動きだ、あれは相当修錬を積んだ者の動きだな」

「見てあのステップ、なんて美しいんでしょう」

 その男たちは恐らく噂になっていた男たちだろう

 五人は圧倒的パフォーマンスによって観衆を沸かせていたのだ

 彼らのダンスは終盤に差し掛かっているのか、五人が一斉に地面に頭をつけ、コマのように回転し始める

 その回転はどんどん速さを増していき、観衆の声援がそれに伴って激しくなっていく

「す、すごい、すごいけどこの人達何で踊ってるの?」

 りえの疑問に答えれる者はいないが、声援から彼らのパフォーマンスは皆に受け入れられていることは分かる

 そして最後の決めポーズ

 観衆の声が街中に響き、男たちは一斉にお辞儀をした

「どうも声援ありがとう!」

「俺たちオタッキーボーイズは一週間に一度ここでダンスパフォーマンスをしています! また見に来てくださいね!」

 そんな彼らに一瞬で近づくエーテ

 そのまま一人一人の体をペタペタと触った

「うわ、なんだ君は」

「なんだちみわってか、ふふ、いい筋肉、君ら相当強いでしょ、この世界の住人レベルじゃとてもじゃないけど君らに追いつけない」

「な、なんなんだ君は本当に」

「こらエーテ、困ってるじゃない。こっちに戻って来なさい」

「ああすまないねぇ。珍しい力を持ってるからつい」

 エーテのその言葉で五人はかなり驚いた顔をした

「私の力は観察し、見抜く力なんだ」

「なるほどそれで。でも俺たちは別に戦いたいわけじゃないんだ。俺たちのダンスをみんなに見て欲しい、ただそれだけなんだよ」

「異世界から来たけど、この世界にはこういったダンスは無いみたいだしね」

 五人は元々地球にいたらしく、そこではオタク系ダンスユニットとして活動していたそうだ

 アニメチックなコミカルなダンスが売りで、まるでアニメーションが現実世界に出てきたかのような不思議な動きで踊る

「俺たちしばらくはこの街で活動するからさ、また見に来てよ」

「いいわねぇ是非とも」

 異世界人の五人組は好青年たちで、悪いことを企むような人物ではなかった

 そのままでも大丈夫だろうという判断から六人は再び聞き込みに戻ることにした

「それでサカシタちゃん、他に何か悪いことをしてるような異世界人とか、暴れ回る強力な魔物とかの情報ってない?」

「うん、一個気になることはあったよ。私突然現れた魔物を討伐するよう言われてて、明日行くとこだったんだけど、一緒に行く? と言うか来て欲しいなぁ」

「もちろん行くわよ。あんたたちもいいわよね?」

 レノンナのツルの一声でその魔物を討伐に向かうことになった

 魔物は王都レブリアという場所から少し離れた平原に現れたらしく、旅人を丸のみにして食べるようだ

 すでに数十人が犠牲になっており、緊急討伐依頼と勇者に討伐してほしいという依頼が出されていた

 ちなみに討伐依頼を受けて行った冒険者たちは誰一人として帰って来ていない

「危険だけど私頑張ってみるよ。レノンナちゃんもいるし」

「うんうんその意気よサカシタちゃん」

 この二人は仲良し姉妹のようになっており、すでにお互い信頼し合っていた

 

 再び馬車に乗ってから一日後、王都レブリアに到着

 そこで勇者が来たことを報告してから魔物の討伐に向かうことになった

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