神と白黒鬼神7
レーダーのようで羅針盤のようで方位磁針のようなその装置は一定の方向を差し続けてる
詩季さんが言うにはこの先には孤児院があるんだとか
「その孤児院は先の能力者戦争という戦争で親を亡くした子達を預かってる施設なんだ。あたしがそこの理事なんだけどさ、皆いい子ばかりだよ」
詩季さんは若いながらに色々なことをしてるね
孤児院にいる子供達の数はおよそ五百人、周囲一帯の街から子供達が集まってるらしい
「ついた、ここだよ」
その施設は学校があり、子供達の遊べる公園があり、なんと遊園地まである
一般の子供もその施設で遊んだり学んだりもできるため、孤児以外の利用者も合わせると数千人規模になるマンモス施設だった
装置が指し示しているのはまさしくこの孤児院だった
「花園孤児院へようこそ! と言うわけでまずは施設の見学を」
「違うよ詩季ちゃん、ここにはあの泥人形の能力者を探しに来たんでしょ」
「あ、そうだった、ついいつもの癖で」
施設をいつも案内しているのか、詩季さんはその説明を始めようとしたため司さんに止められた
「えーっと装置がさすのは三号棟か、十歳から十二歳の子たちが入ってるとこだよ」
三号棟の子供の数は百人ほどで、その中には超能力に目覚めその訓練を受けている子もいるらしい
超能力に目覚めるのは早い子で五歳くらいで、通常は十歳くらいからだそうだ
ちなみに詩季さんはなんと零歳からだそうだ。天才かな?
「ちょっと待っててね、手続きしてくるから」
ここに入るにはたとえ理事長の詩季さんだろうと手続きがいるらしい
強力な超能力を持っている子が犯罪者に狙われたりしないよう万全のセキュリティ対策をしてるからだ
数分ほど手続きに時間を費やし、詩季さんが戻ってきた
「おまたせ、じゃあ中に入るよ。あ、その前に皆この書類にサインだけしてね、あ、でも女神様とリディエラちゃんたちはどうしようか、この世界の人じゃないもんね。うーんまあいいや、理事権限で女神様だからオッケーってことで」
「そんないい加減な・・・」
「だってこの世界の身分証とかないでしょ? 超法規的措置ってやつだよ。なんせこの世界のリーダーは私だからね~」
そっか、一番偉い人がいいって言ってるんだからいいのか
自分で作ったルールに矛盾してるかもしれないけど、確かに僕らはこの世界での身分なんてないからね
「あ、じゃあさ、ここで君たちの身分も作っちゃう? 手続きに一か月ほどかかるけど」
「それは遠慮しときます、先を急ぐので」
「だよねー」
確かにまたこの世界にも来るかもしれないから作っておいて損はないかもしれないけど、今は一か月もこの世界にいれないからね
「さて中に入るよ~。えっと装置が示す方向はこっちか」
玄関に入ろうとすると子供達が一斉に集まって来た
「詩季先生だ!」
「先生! 僕ね、石を浮かばせれるようになったよ!」
「私テレポートができるようになったの!」
おおさすがリーダーで理事長で先生な詩季さんだ
子供達に大人気だね
「おおさすがだねー仁君、今度は鉄球を浮かす練習だね。夢子ちゃんはテレポートか、夢子ちゃんの夢に入れる能力によくあってるのかもね。これからも頑張ってね」
一人一人の顔と名前と能力を覚えているのか、一人一人をほめてる
「先生、その人達誰~? あ、ハクラさんがいるよ! あれでもハクラさんってこんなに小さかったっけ? 僕らと同じ年くらいに見えるよ」
「ああこの子はね、異世界のハクラちゃんなんだ。この人たちは異世界から来たあたしの友達だよ」
それを聞いて子供達はさらにヒートアップした
この世界に異世界から人が来たことはない
正確には来たことがあるみたいだけど、それはかなり前、詩季さんがまだ子供だった頃に世界を滅ぼすために来たらしい
その事件こそがこの子達が孤児になった原因の戦争を起こした事件だ
「すごーい、ねーねーお姉さんたちの世界ってどんなとこ? 綺麗? お花いっぱいある?」
「あるよー、むしろ僕らがそのお花たちを育ててるんだよ~」
「すごおおい! どうやって育てるの?」
「ちょうどいいので見せて上げたらどうですかリディエラちゃん」
サニアさんに言われたので僕も張り切った
時期的に何も植わっていない花壇を見つけるとそこに精霊神としての力を注いだ
その結果やりすぎてしまった
花じゃなくて大量の桜の木が次から次へと生え始め、校庭の周りをぐるっとかこんだ
「ありゃりゃ、ちょっち張り切りすぎちゃったよ」
「「すごおおおおおおおい!!」」
でも子供達の心は一気につかめた
フフフ、精霊冥利に尽きるかも
そんなこんなで子供達と触れ合っていると時間を忘れてしまっていた
結局玄関付近で二時間も話し込んでしまったよ・・・
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