女神と二天の冒険3

 ラナのあまりの力強さに私は驚いた

 炭化していた体を見てみるともう痛みもないほどの回復

 首が折れ、呼吸の止まっていたアスティラちゃんも、手足を吹き飛ばされ失血死しかけていたリィリアちゃんも傷一つなく治ってるし

 とにかくラナってば本当に神人に成ってしまった

 神人は神に近い存在、かつて滅んだ天人と双璧を成す存在

 神に近しい力を持つが、神をも超える力を持つ者もごくまれに生まれる

 ラナはそんな存在だったみたい

「これ、私一体何が起きてるの? 体が軽くて今まで一致してなかった何かが、私の中でカチリとハマったみたい」

 ラナの姿はそこまで変わってはいないけど、神人独特な純白な髪の色と瞳の色が現れてる

 ラナは悪意の塊のような男の死体を見て手を翳す

 すると死体は分子にまで分解されて綺麗に跡形もなく消え去った

「一応魂は浄化されるんですよね?」

「ええ、罪が多いからいつになるかは分からないけど、生まれ変わるはずよ。まあ次は力を人のために使える存在になってほしいわね」

 転生には一応条件がある

 罪を犯しすぎた魂は一度罪を償う必要があるのよね

 こいつは多分かなりの罪を犯してるから、いつ転生できるかは分からないんだけど、そのうちちゃんと記憶を消された状態で転生する

 あ、転生しても記憶を失わないのは特殊な事例で、なぜか地球人に多いのよね

 それにしても神すら殺せる力を持った存在をこんなにいとも簡単に倒すなんて、ラナを連れてきたのは正解だったわね

 まあ私が育てようと思ったのに自力で殻を破っちゃったからちょっと複雑な気分なんだけども

「あれ、これって・・・。ルニア様」

 ラナが男の死体があったあたりから何かを見つけてきた

 それは虹色に輝く何かの種で、多分だけどこれが世界の種ってやつかしら?

 ラナからそれを受け取ると懐にしまっておいた

 一応これはお姉ちゃんに報告しておかないとね

「さて、二人はまだ目を覚まさないわね。ラナ、まだあなたも神人に成ったばかりなんだから疲れたでしょう? 進化って相当エネルギーを使うはずだもの」

「はい、なんだか眠気が」

 ラナもそのままスーッと眠りに落ちてしまったので、私は三人を抱え上げて安全そうな場所に行くことにした

 とはいってもこの世界って本当に洞窟とかがないのよね

 蛙たちは土にもぐるからそう言った家なんて作ってなさそうだし

 知的生命体もいないから頼れそうにない

 ここはひとつ私が一肌脱ぐしかないわね

 三人をひとまず柔らかそうな草の上に寝かせると、その場に土で家を作った

 破壊からの再生、私の権能の一つね

 破壊の力を応用すれば創造までできるのがこの権能の本質

 あっという間にできた家に三人を運び込むと、至高を凝らしたベッドの上に寝かせた

「うん、私ってばデザインの才能あるかも。今度お姉ちゃんにも作って見せて褒めてもらおうっと」

 きっとお姉ちゃんはものすごく褒めてくれるもの

 大好きなお姉ちゃんにも一度家を作ってみるっていうのもいいかも


 そのまま時間が過ぎ、すっかりあたりが暗くなったころにリィリアちゃんとアスティラちゃんが同時に目覚めた

「申し訳ありませんルニア様、本来なら私達がルニア様をお守りしなければなりませんのに」

「いいのよ、私こそ力が足りなくてごめんね。私も、力をもっと扱えるようにしなくちゃ」

 これまで私は自分が強いものだと思ってきた

 現に破壊の力は神々の中でもトップレベルに強力な力

 でも世界にはもっともっと強い力があって、私じゃ戦いにすらならなくなってきている

 それだけ世界のレベルが上がっているのかもしれない

 だからこそ世界は新しい、リディエラちゃんのような新世代を生み出したのかも

 私にもっと力があればこの子達をあんなひどい目に合わせなくて済んだのに

 ため息をついていると天使二人も同じくため息をついた

 何はともあれとりあえずもうこの世界は大丈夫そう

 まだ眠り続けているラナを抱え上げると転移門を開いて世界を渡った

 課題は強くなること。二天も一緒にね

 ラナについては多分まだまだ秘められた力がありそう

 この子はもっと強くなる。その成長も楽しみなのよね

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