利善とレイド1
利善がウルの本拠地にてレイドと合流してから約数時間が経過しようとしていた
利善の空間を支配する能力によって何とかここまで見つかることなく、二人でウル本拠地内を駆けまわっていた
利善とレイドは人質を取られているため従順だった
彼らには爆弾は取り付けられてはいない
というのも無理やり従わされている能力者たちは幹部に割り当てられており、その幹部によって待遇が少し違う
レイドと利善は女性の幹部に割り当てられている
女性という以外は正体不明だが、彼女は幹部の中でも比較的優しいようで、自分の部下である能力者達のことは自由にさせていた
むろん人質との面会も自由にさせている
それを周りの幹部は咎めていたが、アウルはやりたいようにやらせているようだ
「さてレイド、俺たちは今絶賛大ピンチなわけだが、もう少しで人質が幽閉されている部屋だ。覚悟は良いかな?」
「はい!」
利善は空間の力を解除し、レイドと共に一気に幽閉部屋まで走った
その部屋はウルの本拠地でも一番広く、たくさんの人質が幽閉されている
利善は母を、レイドは弟を
二人はドアを開き内部へと侵入し、周りを見渡した
「なん、で・・・」
レイドは愕然としてうなだれた
その部屋には何もなく、ただだだっ広い空間が広がっているだけだった
「ざーんねん、ここには誰もいませんよー」
「その声、おいあんた! 人質たちをどこへやった!」
「さぁ? 私ってばここの管理者ってわけでもないですしー。それに裏切り者に答える義理、ありませんよね?」
白いフードを目深にかぶった女はフフと小悪魔的な笑い声を発する
その直後女は利善とレイドに間に一瞬で現れた
「くっ! この!」
利善が空間の能力を発そうとすると女はそっとその手を抑えた
「しっ、静かに。あなた達を逃がすから私の言う通りにしなさい」
「なんだと?」
「いいからあなたは私に抵抗する振りをしなさい。声までは届かないけどここは監視されてるの」
「・・・、信じていいのか?」
「信じるしかないでしょう、この状況じゃ。心配しないで、人質たちは安全な場所にいる。危害は加えられていないわ。今はね・・・。私が何とか人質に危害が加わらないよう尽くしてるけど、時間がないかも。お願い、外にいる仲間たちにこれを渡して」
女は胸元から小さな記録媒体を取り出して利善に渡した
「仲間?」
「ええ、ここから逃げた先にいる。ごめんなさい、こういう形でしかあなた達を逃がせない。痛いだろうけど我慢して」
「分かった。レイド、覚悟は?」
「とっくにできてます」
二人の意思を確認した女は二人に手を添えた
「死なない程度ってだけだからあまり手加減はできないわ。でも外にいる仲間ならすぐに回復させられる。お願い、世界を救うためにも」
女は手から光を発して二人を吹き飛ばした
それにより二人の肋骨は粉々に砕け血反吐を吐いた
そのまま二人を引きずると女はこの部屋にあるゴミ捨て場のようなダストシュートに二人を放り込んだ
そこはほぼ誰も知らないが外に唯一繋がっている
しかも死角になっており誰も監視していない
放り込まれる寸前利善は彼女に尋ねた
「名前は?」
「私はディス」
それだけ言うと二人はダストシュートへ投げ込まれた
スルスルと滑り落ち、やがて外へと排出される
そこで一人の少女がしゃがんで待っていた
「来た来た。さあ行くよ」
少女は二人を抱え、この世界から転移した
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