イレギュラーメルカの冒険5

 目を覚ますと周りにはたくさんの異能力者が私を取り囲んでいた

「ほお、これが以前神々が噂していた世界のイレギュラーか。全ての世界を作った大いなる根源の娘、すばらしぃいい! これこそ最高の肉体、いや精神体! この娘ならば我らウルの素晴らしい秘検体となることだろう」

 何を言ってるのか全く分からないけど、すぐに抜け出そうともがいてみた

 あれ? おかしい、私がこんな拘束程度で動けないはずがないのに、え、なんで?

「く、ふぅう、ん」

「無駄です。無駄無駄、今あなたは根源の力によってその力を封じられているのです。ふふ、これからあなたの頭を改造してウルの役に立ってもらいますよ。いやあまさかこんなに強いサンプルが手に入るなんて思いませんでしたよ」

 研究員のような男が私を見ながら眼鏡を光らせて笑う

 気持ち悪い、とにかくここから逃げなきゃ

「さぁ手術の準備を」

 男が指示すると数人の男女が前に出てきて手術器具を置いた

 のこぎりのようなものやドリルのようなもの、メスや何かの薬品

 怖い、お父さんが荒くれたちに殺されたときを思い出す

 誰もここには助けに来てくれない。エイシャちゃん、助けて!

「うぐぅ、くっふぅ」

 身動きが取れないまま、頭に向かってメスが伸びて来る

 恐ろしさで目をつむり、なるべく考えないように頭を空っぽにした

「うぉおおおお!」

 突如響く声

 目を開けると研究員を弾き飛ばして私の拘束を解いてくれた人の顔が見える

 彼はヘリオ、妹を人質に取られている少年でここまで連れてきてくれた人

「逃げるんだメルカ! 早く! うぐっ」

 ヘリオのお腹に深々と刀が突きたてられているのが目に入った

「ヘリオ!」

「僕のことはいい! 早く逃げてくれ、そして妹を、頼む」

 拘束が解かれたけど私は逃げなかった

 ヘリオを抱え上げ、そのまま彼と同じ気配のする場所へ

 彼の妹を助けないと

 その場から転移して人質たちが捕まっている部屋へと飛んだ

 でもそこには何もなく、ただの真っ暗な空間が広がってるだけだった

「ここは、いったい」

「だめ、だ、ここじゃ、ない。ここは、罠、逃げ・・・」

 ヘリオは意識を失い、力が一気に抜けた

 お腹の傷は致命傷だけど私ならなんとか治せる

 すぐに治療してとりあえずは命の危機は脱したけど、気絶したままだと運びにくいわね

 でもこの部屋は罠? 確かにそう言ってた気が

「こういう時のために色々と準備しているんだよ我々は。まったく手間をとらせないでくれ」

 さっきの研究員の男が眼鏡をクイッとあげながらこの部屋に入って来た

 まずい、すぐに転移を

 でも転移ができなかった

「な、なんで!?」

「言ったでしょう。色々と準備をしていたんだって。フフフハハハ、君は本当にいい素体だ。脳を改造するのはやめよう。下手に改造すれば能力が下がる恐れがありますからねぇ。ええ、洗脳に移りましょう。洗脳班はこの子に全力を持って洗脳を掛けなさい」

「いや、やめ、やめて!」

 能力が使えなければ私はただの少女。何も出来ないなんて思わなかった

 私なら大丈夫だと思ってた

 甘かったんだ。私は・・・

 ごめんエイシャちゃん、皆、リディエラ、ちゃん

 

 私は暗い中に閉じ込められた

 何の光ももう見えない

 見えない

 見えない

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