組織
完全に気配と姿を消した三人の男女が精霊と鬼神を観察する
一人を除き誰にも認識されてはいないが、その一人と言うのが三人にとっては厄介な存在だった
「あれは俺たちでは無理だ」
「ええ、まさかあのような者がいるとは思わなかったわね」
三人にとって誤算だったのはサクラの存在だった
彼女達は召喚した常闇の魔物をいとも簡単に倒ししめ、それに続こうとした更なる魔物どもの信仰を食い止めた
三人はサクラと精霊達が接触し、どこかへ去って行くのを見て内心は安心していた
しかしその去り際にサクラがこちらを見ていることに気づいた
震えあがる三人だが、彼女はそれ以上何をするでもなく去った
「ふぅ、何かしようもの、なら、殺すってこと、か」
全員が震えあがる。あの目は確実にこちらに対しての威嚇だった
それも一瞬で殺せるぞという意思表示だ
切り札だった常闇の魔物や大量の魔物がいる世界と繋げたゲートも、その全てが簡単に止められた
絶対に破られることがないと思われていた計画が全てとん挫したのだ
三人は逃げた。できるだけ遠くへ
「こっちだ、早く来い」
そこには三人のリーダーである男が立っていた
どうやら三人を回収しに来たらしい
気配と姿を消す能力もこの男の能力だった
「あれは手に余る。一旦帰るぞ」
「う、うん」
完全に戦意喪失した三人に手を貸し、異空間へと繋がる扉を開くと四人はこの世界から消えた
空間を抜けた男たちは大きな神殿のような場所でほっと一息をついた
「はぁはぁ、あんなのどうすればいいんだよ!」
「安心しろ、計画に支障はない。あの世界でのある程度の情報は得た。どういうわけかあの世界は神々に愛されているからな。情報も驚くほどあるんだよ」
リーダーの男は懐から取り出した真っ赤な宝石のようなものを取り出す
「ここに情報が詰まっている。これさえあれば計画は進む」
どうやらリーダーは部下たちにかく乱させつつ自分は本来の目的を達成していたようだ
彼はそれを持って神殿から出ていく
「ふぅ、じゃああたしらお咎めってないの?」
「どうやらそのようだね。リーダーああ見えて部下思いだから。まぁエドガーは仕方がなかった。あの場に行けば俺たちも恐らく・・」
「ふん、あんなの死んでよかったのよ。知ってる? あいつ阿多島で殺そうとしてたのよ!」
どうやらエドガーは嫌われ者だったようで、三人は一斉に口をつぐんだ
助けに行く気は当然あったが、見捨てられても仕方のない最低な男、それがエドガーだった
ひとまず三人は休息を取るために宛がわれた部屋へと戻った
神殿の広場で潜む一人の男
彼はキョロキョロと辺りを見渡しながら隠れつつ目的の人物を探す
見つかれば即殺されるであろう危険を冒しながら男は固定の能力を使って空間をゆがめ、自分の姿を隠す
時に人と鉢合わせることがあったが、空間固定で音まで消しているため気づかれない
そのまま進み、男はようやく目的の部屋へと到着した
その部屋の扉は大きく、巨人でも楽にくぐることができるだろう
その扉を少し開き男は小さく叫んだ
「レイド、俺だ!」
部屋の中には制服を着た少女が一人ぽつんと座っていた
「り、利善さん? 無事だったんですね!」
二人は再開を喜んだ
「ひとまず逃げるぞ。俺から離れるな」
「はい!」
利善は空間を固定し、それらをまとめあげて一気に収縮させた
それにより空間にひびが入り、世界の裏への抜け道を作る
すぐに気づかれるだろうが、逃げ出すには十分な時間だった
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