新国アンデッドの国5
三人は地面に降り立つと僕に歩み寄った
「ふむふむ、まだまだですね。あれは常闇の魔物と呼ばれる深い深い混沌が産んだ化け物。さて精霊の王女、クロハにハクラ、あれはまだ倒せないようですね」
「はい、僕たちの力が至らないばかりに、この国を危険にさらすとこでした」
「分かっているならよろしい。カイト君、あの二人の様子はどうかしら?」
「うん、おおむね順調かな。まだ天使にはなれてないけど、もう少しってとこか」
「あら、意外と早いじゃない」
「まあね、これでも僕は先生としては優秀な方だって自負してるから」
「わらわも先生としてはかなりのものだぞ。そこの二人も育てたしな」
「ふふ、そうね」
この三人は信頼し合ってるみたいだ
長い年月三人で過ごし、異界からの魔物や神獣と対峙してきた三人
今でこそ僕らは神話級にだって太刀打ちできるくらいに強くなった。でも連携は? 信頼関係は?
二人共僕を慕ってくれてるけど、どうにも主従関係のようで距離が縮まらない
もっと二人が、それこそ親友のように歩み寄ってくれれば連携も伝わりやすい気がするんだよね
そうだ、サクラさんたちに聞けばどうすればいいか分かるかも
「あの、サクラさん」
「何かしら?」
「僕達もっと皆さんみたいな信頼関係を気づきたいんです。そうすれば連携だってもっとうまくいくだろうし」
サクラさんは僕の考えをうなづきながら聞いてくれる
クロハさんとハクラちゃんも同様に真剣な表情で聞いてくれた
「そうね、まずは信頼関係をしっかりと築くことが大切ね。そのためにも」
「そのためにも?」
サクラさんは僕達をぎゅっと抱きしめると囁いた
「お風呂、行きましょ!」
そのまま僕らはこの国にあると言う秘湯へと半ば強引に連れていかれた
「しっかり遊びなさい、三人でね」
「「「え!?」」」
今のこの世界情勢で遊ぶ?
「そ、遊ぶのよ。いっぱい遊んで、いっぱい高めあって、いっぱい喧嘩して、それで信頼関係は自然と築かれていくものよ。でも私が視た限りあなた達、大して遊べてもないし喧嘩もしてない。それどころか変に主従関係を構築してるから、信頼し合ってるって言うより一方的なのよね」
確かにそれは僕も思っていたところだった
二人が慕ってくれてるのは本当によく伝わってくるんだけど、どこか遠慮がちで僕に気を使い、本音で語って来てくれてない気がするんだ
それは二人にしても同様みたいで、僕は確かに二人を信頼してはいるけど、どこかで遠慮しているのがどことなく伝わってるようだ
「でも、精霊様はこの世界では敬うべき存在で、私達はそう言われ育ってきました。それを今さら変えるなどと」
「硬い! お堅いわクロハ!」
こつんと頭に軽く拳骨を入れられるクロハさんはキョトンとサクラさんを見た
「そういえばこの国には姫がいたわね? 彼女さっき見たけど、この子に気を使っていたかしら? 友達のように気さくな関係を築けていなかった?」
「た、確かに」
そうなんだ。僕に友達として接してくれる人たちは結構いる
エルナリア姫に九尾族のクノエちゃん、魔王キーラなんかがそのいい例だ
僕は二人の鬼神にもそういう風に接して、仲良く笑い合ったり喧嘩したりしたい
それでこそ本当の友情を築けるってもんじゃないかな?
「精霊の子は歩み寄ってるわよ? あなた達、お硬すぎるのよ」
二人は顔を見合わせて恐る恐るといった様子で口を開いた
「リ、リディエラ、さ、ちゃん」
「リディエラちゃん!」
おお、ハクラちゃんはスッと言えるとは思っていたけど、クロハさんもなんとか僕を名前で呼べた
うんうん、まずはここからだね
「さて、連携についてはまぁ仲良くなれば自然とよくなっていくわ。でも力の使いかたが全然よ、全然!」
「全然ですか・・・」
しょぼんとするクロハさん
「とは言っても、コツが掴めてないって程度なんだけどね。サクラ、この子達にコツをつかむための修行でもつけてあげたら?」
サクラさんは少し考えると首を横に振った
「それは無理よ。鬼神の力って言うのは自分で切り開いていくもの。アドバイスくらいならできるけど、結局は自分で何とかしてもらわないと身にならないの。それに精霊の子の根源魔法は私には使えないからそもそもが分からないの。原理は分かるけど、一人一人違う発現をする魔法なんてどう教えればいいのか分からないもの」
そっか、じゃあ自分達で切り開くしかないってことなのか
でもサクラさんが言うにはあと少しってところみたい
ちゃんと使えるようにさえなれば今とは比べ物にならない力になるらしい
確かにサクラさんたちの力はとんでもないもので、使い方を間違えれば世界自体が消えかねない力だった
精霊神になったおかげか、そういう力の流れがさらに掴みやすくなったから間違いない
僕らはまだまだ強くならなくちゃいけない
少なくともあの常闇の魔物は自力で倒せるくらいにはならないとね
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