巨人族の国3

 根源魔法による力でまずニーズヘッグの鱗を破壊しようとした

 けどまたしても何かに弾かれたかのように破壊の魔法が受け付けられなかった

 そのときニーズヘッグがもぞもぞと動き出してパチリと目を開けてこちらを見た

「まずい! 根源魔法を!」

 慌ててもう一度魔法を撃とうとしたけど、ニーズヘッグは立ち上がってこっちに歩いてきてしまった

 近くで見るとその大きさがよくわかる。山二つ分はありそうなほどの大きさだ

「く、万事休す」

 でもニーズヘッグは何をするわけでもなく僕の臭いを嗅いでフンスと鼻息を吹きかけた

 それだけで吹き飛んでいきそうだけど、ニーズヘッグは特に攻撃してくるでもなく僕を観察してるみたいだ

「ほぉほぉ、精霊じゃ。精霊がおる。ちっこいのぉ」

「え、しゃべった」

「喋って何が悪い。わしぁ人間よりも頭がいいんじゃ。これくらい簡単じゃ」

「なんかなまってない?」

「そうかのぉ? まあわしに言語を教えたんは異世界人じゃけんな。そいつがこがな話し方じゃったけんなぁ」

 何弁だこれ・・・

 でも思ったよりもこの竜話が分かりそうだ

「それで、なんでここに封印されてたの?」

「ん? 封印ってなんじゃ? わしぁここで寝とっただけじゃで?」

「ね、寝てたの?」

「うむ、ちょっと寝すぎたわな。よぉ寝たわ」

 何ともマイペースな竜だ

 ニーズヘッグが言うには当時ただ移動するだけで怖がられてたので、自分の魔力を自ら封じて眠りについたらしい

「わしぁ別に誰かを傷つけたりしようとは思とらん。人族が好きじゃけんな。だが、ふむ、わしがでかすぎるから怖がっとったんか。そうか、そうよな。じゃあこれならどうじゃ?」

 ニーズヘッグから魔力を感じる

 その直後体が光って、僕は眩しくて目を開けてられなくなった

 ようやく目が慣れると目の前にいたはずの巨大竜はいなくなっていた

 キョロキョロと周りを見ると僕の服の足辺りを引っ張る何か

「おい何処みとるんじゃ。こっちじゃ」

「え、何この可愛い子」

 竜の角にひょろりと伸びた尻尾、背中には翼、僕の足元に小さな幼女がいた

「えっと、ニーズヘッグさん?」

「なんじゃい、文句あるんか?」

「いやないけど、そんな可愛い姿になれるの?」

「か、可愛い、じゃと、それはわしに言うとるんか?」

「そうだけど」

「ふむぅ、そんなこと言われたんは初めてじゃわ」

 彼女は人化したのが初めてらしくて、まだ二足歩行で歩くのに慣れないらしい

 僕の足にしがみついて歩いてる

「か、可愛いですね精霊様!」

 子供好きなハクラちゃんが興奮してる

 でもニーズちゃんは僕の足の影に隠れてしまった

「なんじゃい鬼娘! わしに触るな!」

 グルルと唸ってるけどそれすら可愛い

 ハクラちゃんは残念がってるけど、威嚇してる姿を見てまた触ろうとしたら噛まれた

「痛い! 痛いですよぉ!」

「触るな変態!」

「へ、変態!? そんなこと初めて言われたんですけど!」

「ハハ、二人は初めて言われた同士だね」

「笑い事ではないですよ精霊様!」

「うるさい変態! パンツも履いてないど変態!」

「パンツ履いてないからって変態じゃないです!」

「私の妹を変態呼ばわりとは、このトカゲ、お仕置きが必要ですね」

「何じゃい! お前も変態じゃろ! そんな目をしとる! この変態姉妹!」

「え!?」

 その言葉にクロハさんは相当なショックを受けたのか、動かなくなってしまった

「あ、あの精霊様、それでニーズヘッグに危険はないのでしょうか?」

 すっかり背景となっていた巨人王とその部下達。存在を忘れてた・・・

「大丈夫だと思うよ。この子人族が好きって言ってるし」

「うむ! 様々なものを生み出すお前たちのことは好きじゃ。眠りにつく前は結構助けてやったんじゃけどなぁ」

 どうやら長い年月が経って彼女のことは曲がって伝わってたらしい

 でも誤解はすぐ解けた。こんなに可愛い子が悪いこなわけない

 敵意も悪意も全く感じないし

「強者と言うのはむやみやたらに何かを傷つけたりはせん。わしぁ普段おとなしいからのぉ」

 とにかくニーズヘッグ復活事件は無事解決かな?

 彼女はこのまま巨人族の国に住むらしい。もちろん人型形態でね

「わしは食事をせんでも空気中の魔力だけで生きていけるけんな。じゃが食事はとりたいのぉ。美味しいものは好きじゃけんな。ちょこちょこ旅行でもしようかのぉ」

 人型形態での食事量はその見た目相応らしいから食費が驚くほどかかるってことはないみたいだ

 まぁ迷惑もかけそうにないから大丈夫か

 巨人たちはちょっと驚いてるけど、小さな幼女一人くらい増えてもどうってことない

 それに皆のアイドル的にちやほやされてるし、むしろ喜んでる

 こうして巨人族の国での事件を無事解決した僕らは、次に問題が起こってる国がないか探しに行くことになった

 でも探す手間は省けた。シノノが情報を伝えてくれたからね

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