巨人族の国2

 それからは王様はとんでもなく平謝りというか、土下座までしてさらに兵全体を正座させて謝らせた

「謝らなくていいから今この国で起こってることを教えて」

「は、はい、申し訳ありません」

 巨人王の名前はボルゲルさんと言って、この国でも最強という実力の持ち主

 それで彼らが戦闘の準備をしていたのは、案の定ニーズヘッグという神話級の魔物が封印を解いて暴れ出したからだという

 まだ完全に力を取り戻していないのか、封印されていた山にいるらしいけど、ひとたび動き出せば周辺にある街や国は一瞬でなくなることが予想される

 だから今のまだ力が完全に戻っていない時に退治しようという話になったらしい

 そう言うことなら精霊を頼ればいいのに、王が言うには精霊の手を煩わせたくなかったのと、自分達だけでもなんとかなるだろうと思ったからなんだって

 まったく、そう言う問題を解決するのが僕らの仕事なんだから遠慮はしてほしくない

 それに自分達だけで神話級を倒せると自負するのはいいけど、それは自国民も危険にさらす行為だ

 それとなく諭すと、ちゃんと僕らと協力して事に当たることを約束した

 よし、まずは偵察かな?

 こういったことはクロハさんが得意なので彼女に任せることにした。影の精霊シノノに任せてもよかったけど、彼女は今世界中を回って封印を解いてるやつらの仲間がいないか調べてもらってるんだよね

「では精霊様、行ってまいります」

「うん、気を付けてね」

 クロハさんはシュッとその場から消えた

 影から影に移動できる能力らしい

 シノノと同じ能力だ


 そのまま一時間ほど待っていると無事クロハさんは戻って来た

「精霊様」

「うお!いつの間に!」

 急に背後から話しかけられたからびっくりしたよ

「すみません驚かせてしまいました」

 何でクロハさんちょっとうれしそうなんだろう

「ニーズヘッグの動向ですが、今は眠っているようです。それと封印されていた神殿は既に破壊しつくされていますね」

「分かった。眠ってるなら都合がいいね。先に僕らが行くからボルゲルさんたちは後からついて来てよ」

「拝承致しましたぞ!」

 そのままクロハさんを先頭に山を登り始めた

 ニーズヘッグというのは竜だったかな? 相当大きな竜で、世界樹の根っこを齧るって言われてる

 ただこの世界の世界樹は齧られてないから、前の世界に伝わっていた話のニーズヘッグとは全然違う存在だろう

 山を登り始めて数時間。よくよく考えたら僕らは飛んで行けばよかった

 まぁ魔力を吸収しつつ歩いてるから疲れないんだけどね

 時々巨人たちが僕らを気遣って乗せてくれたりしたからそんなに時間もかからず神殿まで来れた

 神殿は結構大きいはずなんだけど、ニーズヘッグが破壊したせいでただのがれきの山になっていた

 そのがれきのてっぺんにニーズヘッグが丸まって寝ている

 大きい・・・。巨人たち百人分くらいの大きさはあるんじゃなかろうか

 まだこっちに気づいている様子もなく鼻提灯なんかを出してぐっすりだ

「今がチャンスですよ精霊様」

「うん、一気に叩こう」

 まず僕が強力な古代魔法を練ってニーズヘッグの上に超巨大な炎の塊を作り出した

「う、ちょっと大きくしすぎたかも」

「大丈夫です。そのまま落としましょう。周辺は私が結界を張って被害を抑えます」

「うんお願い」

 クロハさんが周囲に結界を張ったのを確認するとそのまま巨大炎をニーズヘッグにぶつけた

 黒煙が上がって大爆発が起きる

 僕らの周りにも結界を張ってなかったら熱波で巨人たちが死んでたかも

 煙が晴れてニーズヘッグの死体が・・・。え、傷一つない

 しかもまだ寝てるし

「これは一筋縄ではいきそうにないですね」

「あ、でも今の炎でニーズヘッグが熱を帯びてますよ。ここは私がとどめを!」

 ハクラちゃんは神力によって浮き上がるとそのままニーズヘッグの上に来た

「いっきまっすよー!」

 ハクラちゃんは手をニーズヘッグにかざすとそこから大氷雪を降らせた

 ブリザードと言うのも生易しいほどの凍える風。普通の生物なら一瞬で凍り付いて永久的に凍結するだろうね

「ふぅ、一仕事しましたよ」

 ハクラちゃんが戻ってくるとカチカチに凍ったニーズヘッグの姿がある

 高温で熱して氷点下よりもさらに冷たい絶対零度で熱を一気に奪ったんだ

 当然無事では済まないだろう

 ほら氷にひびが入ってニーズヘッグが粉々に・・・。ならない

 なったのはニーズヘッグの周りに付いていた氷だけだ

 奴は相変わらず眠ってる

 ここまでやられて起きないってかなり鈍感なんじゃなかろうか

「なら私が!」

 今度はクロハさんがニーズヘッグの前まで歩きだし、呪いの呪文を唱え始めた

 ニーズヘッグにまとわりつく死者の怨念がその命を削っているはずだ

 それなのに全く何も感じていないのかずっと寝てる

「嘘、私の呪いが効かない生物がいるなんて」

 これにはさすがのクロハさんもがっくり来てる

 これは参ったな。どうすればこいつを倒せるんだろう

 巨人たちは僕らの力を見て思考停止してるし

 ここは僕がやっぱり根源魔法で倒すしかない。僕は危険だからとみんなを下がらせた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る