巨人族の国1
帝国での問題が片付いたのはいいんだけど、このエンシュに思いっきり懐いちゃったこの子をどうしよう
言葉もまだ覚えてない本当に生まれたばかりのような女の子
僕らと同じ精神生命体で恐らく精霊なんだろうけど、この子は元々あの全てを滅ぼしそうな巨人スルトだったんだ
いやまあ今はまったく別の生命体になってると言っていいんだけど・・・。とりあえずはエンシュに懐いてくれてるからこのまま彼女に面倒を見てもらおうかな
「え!? 私が出すか? はいまあ大丈夫ですが・・・。私に、娘・・・。これはなんともワクワクしますね! シルフェイン様もリディエラ様が生まれた時このような気持ちだったのでしょうね」
早速母性が芽生えてるからちゃんと子育てしてくれそうだ
それにエンシュだけじゃなくてしっかりしたテュネが・・・。いやアスラムの方がこういったことはしっかりしてるかも
テュネは結構抜けてるからね
にしてもエンシュがここまで子供に対する面倒見がいいとは思わなかったよ
目を輝かせながらちっちゃなスルトをあやしてる
そうだ、スルトって仮称だから名前を付けてあげないと
「エンシュ、その子に名前を付けて上げなよ」
「そ、そうですよね! いつまでも仮称ではだめですし」
エンシュは顎に手を当てて考え込む
「私の娘だからやはり、ブツブツ・・・。炎の子ブツブツ・・・。バーニングちゃん、いえそれは安直すぎですね。そうですね・・・。」
結構考えてるね。名前は一生のものだからしっかりと考えて着けないとね
テュネやアスラム、フーレンも一緒になって考えてる
その結果
「決めましたリディエラ様! この子はシュラです! 私の名前からとりました」
「うんうん、いいんじゃないかな」
シュラと名付けられたこの子は不思議そうにエンシュを見ている
小首をかしげてるのがすごく可愛い
「シュラ? シュラ・・・。シュラ!シュラ!」
「え、しゃべった」
シュラちゃんは名前をもらったことがちゃんと分かっているのか、飛び跳ねて自分の名前を連呼しながら喜んでる
なんてかわいいんだこの子
「この子、かなり知能が高いみたいですね。私達の言ってることもすぐに理解していますし、言葉を覚えるのも早いです」
一応精霊は生まれた時からある程度の知識を要して生まれる
この子ももしかしたらそうなのかもね
こうして僕らはエンシュにシュラちゃんを任せてまた問題の起きている国へ向かった
次は巨人族の国で、帝国を手助けするために呼んだ精霊の中の一柱、虹の精霊シエルに聞いたんだけど、巨人族の国ボガードでは現在巨人たちが戦闘の準備をしているらしい
彼女はたまたま虹の上から見ていたんだそうだけど、かなり切羽詰まった顔をしていたらしい
まったく、どこの国ももう少し精霊を頼りにしてほしい
自分達だけで解決しようとしすぎだよ
シエルによると巨人族の国にはニーズヘッグと呼ばれる巨大竜が封印されているんだとか
その封印が何者かの手によって解けかけてるらしい
あの黒い魔族はもういないから、やっぱり別の誰かが動いてるに違いない
もしかしたら何か手掛かりがつかめるかもしれないし、巨人たちのことも助けれると僕らはすぐにボガードへ向かった
帝国から西方向へ飛んで、高い山々を超えた先にあるボガード
巨人たちはそこでのんびり暮らしてるんだけど、彼らは一応戦闘種族だ
毎年巨人たちの間では格闘技の大会も開かれてるらしい
ちなみにこの大会は別の種族も参加可能なんだけど、今までは竜人くらいしか参加してないんだよね
何しろスケールが違いすぎる
竜人なら竜化ってのがあるから、巨人たちと同じくらいの大きさになれるんだけど、普通サイズの人達じゃ魔法でも使わない限り勝てないからね
その大会は魔法禁止だかまあ無理だよね
巨人族の国ボガードに着くとピリピリとした空気が張り詰めていた
一応巨人王に挨拶するため兵士がいる広場に降り立ってみたけど、いきなりこれは無いんじゃないかな?
「何だこのチビどもは。踏みつぶされたいのか?」
「とっとと帰れ。俺らは忙しいんだよ」
「ちょうど子供のおもちゃが欲しかったところだ。俺が持って帰ってやるよ」
なんて絡まれてしまった
のんびり暮らしてるんじゃなかったのか
「こいつら精霊様になんと無礼な。ちょっとお仕置きが必要ですね」
「あ、まずい」
ハクラちゃんがクロハさんを止める間もなく巨人たちはノックアウトされていった
「な、なんだこいつ! チビの癖になんてつよさだぐべっ!」
あーあ、クロハさんやりすぎだよ・・・。兵士全員おねんねしちゃったじゃない
そこに慌てた様子で重装備の男性がドシンドシンと地面を揺らしながら走ってきた
「何事じゃお前たち! な!? 全員なぜ転がっておる。お前たちは一体何なのじゃ」
「失礼しました王よ。私はクロハ、鬼ヶ島の姫です。そしてこちらは私の妹ハクラ、そして、こちらの方は精霊王女さまです」
それを聞いて巨人王は開いた口が塞がらないようだった
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