イレギュラーメルカ6

 エイシャちゃんの手、やわらか~い

 やっと触れ合えたお友達の手

 こんな逃げ出しているような状況じゃなかったらもっと堪能できたかも

 それに新しいお友達のマキナちゃんはしっかり者って感じかな? この子も可愛いわね

 ショートヘアに知的そうな顔立ち。電子の女神って言う女神らしいわ

「ここまでくれば追っ手もなかなか手を出せないはずよ。ここはね、あなたのお母さんがいた場所なのよ? 彼女が作り出した世界」

 私のお母さんは原初って言われる全ての世界の始まり、全ての母と呼ばれる人?で、今はどこにいるのかもわかっていない

 少し前にあった大きな戦いで力を使い果たして消えたとも言われている

 エイシャちゃんが言うには、ずっと娘の私のことを思っていてくれたみたい

 一目でいいから会いたいけど、もう会えないのかも

 お父さんの愛したお母さんに、会いたい

「さてと、少しの間不自由かもしれないけど、一応信頼のおける人に連絡を取っておいたわ。あの子ならあなたをうまく隠してくれると思う。それにあそこは生活できるだけ開拓されてるから、暮らすのにも不自由しないはずよ」

 どこかな? 私の能力をフルに使えば分かると思うけど、そんなことすればきっと見つかっちゃうよね?

 だから我慢。せっかくエイシャちゃんたちが私を助けてくれてるんだもん

 それから私達はしばらくこの力渦巻く世界で暮らした

 エイシャちゃんと私は平気なんだけど、マキナちゃんとアズリアちゃんは辛そう

 多分この世界の力の強さに体が慣れないんだと思う

 だから私は無理せしないよう言ったんだけど、二人は笑って大丈夫って言ってる

 そんなわけないじゃない

「もう、正直に言ってよ。お友達なんだから、そんなことであなたたちが傷つくのは嫌なの!」

 私は二人の体に保護用の結界を張っておいた

 薄くて張ってるのも分からないくらいだけど、どんな力だろうと通さない結界をね

「ありがとう、すっごく楽になったよん」

「ええ、さすがはメルカちゃんね」

 アズリアちゃんはお姉さんみたいに私を撫でてくれる

 幸せだなぁ

 四人でここで暮らし始めてから時間にして数週間くらいたったころ、エイシャちゃんに一報が入った

「ほんと!? よかったわ。これで安心。うん、大丈夫だと思う。そっちは? うん、え? なるほどね。でもその二人なら大丈夫。え!?プリシラもいるの!? うーん、あの子真面目だからきっと報告しちゃう。うん、そうね。じゃぁそっちは任せるわ」

 そこで話が終わった。プリシラって誰なんだろう?

 もしかして匿ってもらえる場所にその子がいて、見つかったら報告されちゃうのかな?

「よしっと。メルカちゃん、行くわよ。これから行くところは全ての世界を知れる場所。知識の世界アカシックレコードよ」

 なんだかすごいところみたいね。逃亡中だって言うのにちょっとワクワクしてる

 四人で力渦巻く世界を抜け出すと、アカシックレコードへ向かって進路を取った

 私は全員を隠匿するために力の漏れ出なくなる結界を張って貢献

 エイシャちゃんが扉を開いた。狭間の世界という全ての世界をつなぐ回廊の中に知識の世界は広がっているらしい

 それも全てアカシックレコードを管理している人が作り出したって言うから驚きよね

「ほら、着いたわよ」

 え?もう?

 狭間の世界に入ってすぐなのにもう着いちゃったらしい

「ここが知識の世界、アカシックレコード」

 エイシャちゃんが手を広げると、どこからともなく黒い肌の人達が現れた

「エイシャ様にメルカ様御一考ですね。主様がお待ちです」

 その人たちは闇人と言って、死に絶えてしまった闇達の眷属らしい

 私が封印されていた間に起きた大きな戦いの犠牲者は少なくない。闇達もそんな犠牲者の一部

 闇人達はそれを知らない

 闇と神々は和解して共に戦っていたことを知らずにあの子のいた世界に閉じこもっていた

 きっと闇達が操られていたことも知らずに、その時の恨みのみを聞かされていたはず

 私は封印の中からずっと見てた

 でも今の闇人達からはまったく憎しみというものを感じれなかった

 きっとアカシックレコードの管理者という人が取り除いたんだろう

「主様、エイシャ様がいらっしゃいました」

「む、ありがとうミヤ、アヤ」

 後ろ姿しか見えないけど、小柄な女の子が椅子に座って手をせわしなく動かしてる

 その少女がこちらを振り向いた

「よく来たぜな、原初の娘メルカ。俺様がこの世界の主、パリケルだぜな」

 彼女はニコリと微笑んだ。なんてかわいい子なんだろう

 思わず私は近づいて抱きしめていた

「ぬわ! 何をするんだぜな!」

 パリケルちゃんはもがいてるけど、私が放さないでいるとあきらめたようにグデッとしてしまった

「ぬ~、放してくれ~」

 弱弱しくそういうパリケルちゃんを見てエイシャちゃんが笑う

 それからしばらくして私に抱きしめられたままのパリケルちゃんが、私達にとって驚くべき話をゆっくりと話し始めた

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