妖怪族の国60

 第三階層では巨大日本庭園のような迷路になっていて、そこかしこに忍びのような狸魔物が潜んでいる

 そいつらが使う刀には幻惑毒が仕込んであるみたいで、ちょっとかすっただけでもひどい幻覚になるみたい

「このくらいなら躱せるんだよ!」

 タカラちゃんの動きが変わった

 少し前までのおどおどした雰囲気は無くて、そこには立派な戦士としての彼女がいた

「妖術ポンッ! 岩食み!」

 岩石で作り上げた巨大な狸が迷路を破壊しながら進み始めた

 なんて大胆な攻略なんだろう

 ガンガンと辺りを崩し、襲ってくる忍者狸を喰らいながら大岩狸を進ませ続ける。 階段まで壊さないでね?

 辺り一帯が荒地になったところで大岩狸は止まり、魔物の方も全滅したみたいだ

「ふぅ、これ結構疲れるんだよ。ごめんなさい王女様、僕、少し、休むんだよ」

 張り切りすぎて疲れちゃったみたいだ

 僕はタカラちゃんを背負うと階段を探して歩いた

 がれきなどに埋もれたのかなかなか見つからなかったけど、タカラちゃんが完全に眠ってしまった頃に見つかった

「さてと、慎重に降りなきゃね」

 しばらく休憩しないとタカラちゃんは目を覚まさないと思う

 だからまず休憩できる場所を探してそこで少し休憩することにした

「ふぅ、ここには魔物がいないみたい」


 四階層は今までの魔物とはレベルが違ってて、とにかく強くてタフだった

 どれも岩系の魔物で、ちょっとやそっとの攻撃じゃダメージがあまりないみたいだね

 一応ところどころに安全地帯があるようで、そこは助かったけどね

「ん、んん。あれ? ここはどこなんだよ?」

 あ、タカラちゃんが目を覚ましたみたいだ

「お、王女様! また王女様の手を煩わせてしまったんだよ・・・」

 落ち込むタカラちゃんの頭を撫でてあげる。目を細めて気持ちよさそうなのがすごく可愛い

「大丈夫だってば。タカラちゃんのおかげでここまで来れたんだよ? タカラちゃんは自分を過小評価しすぎ。もっと自信をもってよ」

「僕、自信を持っていい?」

「そうそう、きっとクノエちゃんにも追いつけるよ。それにさっきの寝顔、可愛かったし」

 可愛かったと言われてタカラちゃんは顔を赤くしている

 そっと抱きしめてあげると僕の平らな胸に顔をスリスリしてくる

 なんという可愛さ

「王女様良い匂いなんだよ。安心するんだよ」


 それからもう少しだけ休んでまた迷宮を進む

 今度は僕が出てくる魔物を片っ端から倒していった

 かなりの数な上にタフすぎてなかなか倒せない

 魔法も合成魔法じゃないとダメージが与えれなくなってきた

 さすがの僕も少しばて始めてきたけど、ところどころに待避所があるおかげで回復しながら進めた

「王女様すごいんだよ。魔法ってこんなにすごいんだよ。僕も使ってみたいんだよ」

 タカラちゃんは目を輝かせて僕の魔法を見てる。ちょっと教えてあげようっと

 幸いにも見たところタカラちゃんの魔力は相当に高い。これはもしかしたら

「まず魔力を感じるところから始めようか」

 待避所でタカラちゃんに魔力の練り方を教えると、なんとあっさりできてしまった

「出来た! 出来たんだよ!」

 呑み込みが早いタカラちゃんは初歩魔法を短時間で習得してしまった

 恐ろしいほどの成長スピード。やっぱりこの子には魔法の才能があるみたいだ

「僕、魔法使えるんだよ! クノエちゃんに追いつけそうなんだよ!」

 うんうん、きっとタカラちゃんならいい魔法使いになれるはずだ

 そこからは二人で魔法を使いながら四階層を攻略していった

 どうやらタカラちゃんの素質は天才的みたいで、自分なりの組成で新しい魔法を組むといったとんでもないことをやってのけている

 この子、テュネに教えてもらえば化けるかもしれない。妖狸族だけに!

「だいぶ進めたね。もう少しだと思うんだけど」

「精霊様、疲れてない? 少し休憩するんだよ」

 丁度待避場所が見えた。タカラちゃんの言う通り僕も少し疲れてきている

 ここまで連戦に次ぐ連戦だったから魔力が回復しきる前に魔法を使ってるからなぁ

「よし、そこで少し休憩しよっか。今まで歩いた距離的にここが最後の休憩ができる場所だと思うし」

 一階層から三階層までが大体同じ時間攻略に掛かったから、多分ここも同じくらいだと思うんだ

 もちろん戦闘で時間がかかるからその分を差し引いてる

「よし、力も戻ったしそろそろ行こっか。タカラちゃんは大丈夫?」

「僕はまったくもってもんだいないんだよ! むしろ有り余るこの力をもっとドッカンドッカン使いたいんだよ!」

「あまりドッカンドッカンは困るからほどほどにね」

「はいなんだよ!」

 うん、ちゃんと注意を守ってくれる。本当にいい子! 可愛い!

 休憩場所を出てから少し進むと階段が見えた

 これ、降りてから休んでもよかったね

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