妖怪族の国59

 第二階層

 ここにはさらにたくさんのトラップがあって、タカラちゃんが常にフラフラ状態になってしまった

「ぬふふん、おいしそうなお餅がいっぱいいっぱいあって食べきれそうにないんだよぉ~。ほら、王女様も食べるといいんだよぉ~」

「落ち着いてタカラちゃん。駄目だこりゃ、気付けしよう。ちょっと失礼」

 僕は手をタカラちゃんに向けてかなりの低出力で静電気のような魔法を当てた

「パチッときたんだよ!」

 驚いたタカラちゃんは正気に戻った

「ほらタカラちゃん、これをかぶってて」

 僕はタカラちゃんにマスクをかぶせた

 防毒マスクなんだけど、この幻惑させる粉からも守ってくれるはずだ

「すごいんだよ。粉をかぶっても平気なんだよ」

 このマスク、僕に必要なかったから買わなくてもよかったって思ってたけど、タカラちゃんの役に立ったから結果よかったね

 初めて人間族の街に行ったとき、もしかしたらと思って色々買い込んでたんだけど、その中の一つがこの防毒マスク

 買った後気づいたんだけど、僕たちは呼吸をしていないため防毒マスク自体が必要なかった

 それでも何かのために使えるかもと取っておいてよかった

「ここからは任せるといいよ。僕がどんどん敵を倒していくんだよ」

 二階層も当然たくさんの魔物が出て来る。一階層の比じゃないくらいに多い

「合成魔法、ボルティックバーム!」

 燃え盛る雷、たくさん出て来た魔物を一気に殲滅

 僕もかなり合成魔法がうまくなったもんだ

 複数回撃ってもばてる前に魔力が回復するようになっている

 少し前まで合成魔法一回で僕の魔力は尽きていた。結構魔力量が増えてるみたい

「妖術、ポンッ! 腹太鼓!」

 タカラちゃんが急に可愛いお腹を出したと思ったら、そのお腹をポンと叩いた

 すると魔物の頭上から巨大な岩が現れて落ちた

 腹太鼓は叩くたびにランダムに何かを召喚する力らしい

「大当たりだよ! この妖術、たまに小石とか逆に魔物が出てきちゃうことがあるから賭けなんだよ」

 さらにもう一鼓。ポコンという可愛い音が鳴って召喚されたのは、業火!

「また大当たり! 今日は調子がいいんだよ!」

 タカラちゃんのおかげでこの辺りの魔物は一掃できた。でもまだ階段が見つかってないんだよね

 歩き回ってるうちに今度は部屋のような場所を見つけた

「ここ、何だろうね」

「入ってみるんだよ」

 中は少しだけ広い部屋、その中央にこたつ、そしてその上にミカンが乗ってた

「これ、休憩する場所かな?」

「そうだよきっと! ミカン食べるんだよ!」

 それにしてもここは暖かいのにこたつってなんか変だ

「待ってタカラちゃん、何かおかしいよ」

「え?」

 あ、もうこたつに入っちゃってた

「うわ! こたつが動いたんだよ!」

 そのこたつはひっくり返り、足がグネグネと動き出した

「ヒィイイ! ミミックなんだよ!」

 ミミックは無機物に擬態する魔物、こたつに化けてたから仮に“こたつミミック”と名付けておこう

「びびびびっくりしたんだよ。もうこたつに入れないんだよ」

 ミミックはシャカシャカと蜘蛛のように動いてこちらに迫ってくる。食べる気満々みたいだ

「せせせ精霊様、僕はちょっと動けそうにないんだよ」

 どうしてかと理由を聞こうとして見たら、タカラちゃんの足元に水たまりができていた

「あ、ご、ごめんね!」

 僕はバスタオルを取り出してタカラちゃんに渡すと彼女を守るようにしてミミックの前に立った

「合成魔法、パープルブラスト!」

 紫に光る二属性のレーザー、メラメラと燃えつつも水のように揺らぐこの魔法は相手を拘束しつつ継続的なダメージを与えることができる

 これによってミミックの動きは止まり、段々と動かなくなって消滅した

「よし! タカラちゃん、大丈夫?」

「う、うう、うわーん」

 よっぽど怖かったのか、タカラちゃんが抱き着いた。裸で・・・

 タカラちゃんを水魔法で洗ってからタオルで吹いてあげた後、僕の着替えを少し切って小さくして、それをタカラちゃんに着せた

 うん、うまく切れたからタカラちゃんにぴったり

 パンツは布を切って縫って作ったよ

「うぐっ、ひぐっ、王女様の前で粗相をするなんて、情けないんだよ」

 タカラちゃんが大泣きするので僕は抱きしめた

「大丈夫だよタカラちゃん、僕だって怖いことがあるんだからタカラちゃんと同じだよ。でもタカラちゃんはそんなの乗り越えられる強さだって持ってる。きっとタカラちゃんは強くなれるよ。だって自分の弱さを分かってるから」

「そう、なの? 僕、強くなれる?」

「うん!」

タカラちゃんはちょっと自信を取り戻してくれたみたいだ

 元気になったタカラちゃんはよりいっそう頑張って魔物を倒し始めた

 それにしてもこれは・・・。タカラちゃん、さっきよりも強くなってる?

 妖術がさっきとは比べ物にならないほど安定していた

 賭けって言ってた腹太鼓の召喚するモノが、百パーセントの確率で強い攻撃手段になっていた

「あれ? 僕の力、なんでこんなに強くなってるんだよ?」

 タカラちゃんも不思議そうに自分の力を見ていた

 多分なんだけど、タカラちゃんは自信がついて本来の力を発揮したのかも

 そこからタカラちゃんの怒涛の妖術で魔物を撃破

 無事三階層への階段を発見した

 それにしてもここ何階層まであるんあろう? ここの階層は入るごとにまちまちだから、タカラちゃんも分からないって言っていた

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